THE OVERLOOK/Michael Connelly
ハリー・ボッシュものの第13作、『THE OVERLOOK』を読む。
前作『ECHO PARK』の設定が、2006年。そのときハリーは未解決事件捜査課にいたけれど、今回の事件はそれから半年ばかりたった時点からスタートする。ええと前作のネタバレをするわけにはいかないのだが、今回ハリーはロス市警本部の特別殺人課(原文はHomicide Special)に移って、新しいパートナーと組んでいる。エコー・パーク事件でFBIと因縁が残ったかたちになったが、まあ、いろいろあって、この異動になったのだろうとこのシリーズを追っているファンには推測できる。
さて今回の事件、マルホランド・ドライヴをすこし上がった高台で一人の男が処刑スタイルで殺されているのが発見される。頭に22口径を2発撃ち込まれているという。被害者はスタンリー・ケント医師。子宮癌の専門医で、遺留品にはあちこちの病院の入室管理用のIDカードがある。
現場に着いたハリーは、ケント医師のポルシェのトランクになにか重い器具でも置かれていたような痕を認める。かれはなにか見たことのないリストバンドのようなものを両手首につけていた。いったいなんだろうとハリーたちが、首をひねっていると同じく現場に駆けつけたレイチェルが、FBIはそれがなにかを知っているし、そのためにここに来たのだと告げる。それは、放射線治療を行う医師などが、自分の被爆状態をチェックするためのTLDリング(Thermal Luminescent dosimetry)だという。FBIは、病院が管理しているセシウムなどの放射性物質を、アルカイーダ系のテロリストが狙っていることをすでに想定して、これらの物質にアクセスできるロスの医師のモニタリングをしていたのだという。事件は一気に、テロリストグループによるセシウム強奪とダーティ・ボムによるロス攻撃という最悪の事態を想定した国家的な非常事態の様相を呈するが・・・・というようなオハナシ。
本書、もともとはニューヨーク・タイムズ・サンデー・マガジンの連載小説だった。本にするにあたって、だいぶ加筆したらしいが、それでもペーパーバックで実質260ページばかりだから、これまでのシリーズにくらべるとあきらかに分量が少ない。そのせいだけでもないだろうが、事件の先行きは途中からだいたい見えるし、コナリーにしてはぜんぜん物足りないんだなあ。わたしのようなファンは、ボッシュの近況を知ることに関心があるので、まあ、多少、出来が悪くても満足なのだが、これはそういう方以外にはあまりおすすめできないかもしれない。ただ、逆に古いファンの方には、この事件の捜査でちょっとした問題が発生するので、これが次回作からのボッシュにある種の宿命のようなものを与える可能性もあるという意味で、必読かもしれません。
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