海外長編ベスト100
デイヴィッド・ロッジの『交換教授』だったかな、文学部の教授連中が集まるパーティで、自分が読んでいない本を告白しあうゲームがあった。たしかゲームの名前が「屈辱」。
たとえば参加者が20人がいるとすると、自分以外の19人全員がその本を読んでいたら19点獲得できる。自分と同じように誰もその本を読んでいなかったら0点である。
これ、じつによく考えられたゲームでね、もしカッコつけて、読んでいなくてもさほど恥じゃないような本をあげていたら、絶対勝てない。
たとえばヘンリー・ジェイムスの『使者たち』なんてのを、「いや恥ずかしながら、これ読んでいなくてさ」なんて告白したって、たぶんそんなもの読んでるのは専門家くらいだから得点は低いし、パーティも盛り上がらないから安全パイを切る臆病なやつ、なあんて莫迦にされるだけだろう。
かといって、高得点できるのがわかっていても、たとえば『マクベス』なんてのをもし挙げれば、ほとんど職業的な自殺である。ねえ、ねえ、聞いた?英文学の山田教授、『マクベス』読んでないって、告白したらしいよ。えっ、ウッソー、てなもんであります。(笑)
ということで、このゲームにどんな本を「読んでない」と告白するかは、なかなかスリリングでありますが、同時に、けっこうなカネを賭けていたりすると、屈辱(おいおい、これ読んでないってホントかよ)を忍んでカネを得るか、名誉を守ってカネを失うかというきびしい選択を迫られることになるのであります。いや、やりたくないゲームだねえ。
というマクラで、今日発売の季刊誌「考える人」の特集「海外の長編小説ベスト100」のなかで、わたしの読んでいない本を告白します。めんどくさいから半分の1位から50位まで。赤字が自虐告白分でございます。どうぞお笑い下され。(著者は省略。題名のみ)ドン・キホーテ、白鯨、レ・ミゼラブル、モンテ・クリスト伯、千夜一夜物語、はダイジェスト版、または低学年用バージョンでは読んでいますが、ここはきびしく未読ということに。
百年の孤独 失われた時を求めて カラマーゾフの兄弟 ドン・キホーテ 城 罪と罰 白鯨 アンナ・カレーニナ 審判 悪霊 嵐が丘 戦争と平和 ロリータ ユリシーズ 赤と黒 魔の山 異邦人 白痴 レ・ミゼラブル ハックルベリイ・フィンの冒険 冷血 嘔吐 ボヴァリー夫人 夜の果てへの旅 ガープの世界 グレート・ギャツビー 巨匠とマルガリータ パルムの僧院 千夜一夜物語 高慢と偏見 トリストラム・シャンディ ライ麦畑でつかまえて ガリバー旅行記 デイビッド・コパフィールド ブリキの太鼓 ジャン・クリストフ 響きと怒り 紅楼夢 チボー家の人々 アレクサンドリア四重奏 ホテル・ニューハンプシャー 存在の耐えられない軽さ モンデ・クリスト伯 変身 冬の夜一人の旅人が ジェーン・エア 八月の光 マルテの光 木のぼり男爵 日はまた昇る
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コメント
面白いゲームですね。
暇に飽かせて私もこのベスト50でいくつ読んだか数えてみました。結果は17冊。(かわうそ亭さんは21冊ですね)
あまり小説を読まないにしては意外に好成績(?)ですが、基準が少々甘く、例えば「ドン・キホーテ」は岩波文庫版の「正編」3分冊のうち2冊目くらいでやめたはずですが、これで分かった心算になったのでOKにしました。
未読の33冊中かわうそ亭さんの既読は14、かわうそ亭さんの未読29冊中、私の既読は10。従って、ふたりのゲームなら「屈辱点」はそちらが合計10点に対し私は14点で、私の「勝」でした。
投稿: 我善坊 | 2008/04/05 20:57
こういうゲームにはまったく弱いのです。
ここに出ている書名で古典とされているものは、たいがいダイジェスト版(黄色い表紙で大学の生協で売ってました)で文学の授業に間に合わせていたのです。これはやっぱりカウントできませんね。それでも源氏物語は(これは海外から見れば外国文学)、まず英訳版から入りました。これもカウント外か、、、。
投稿: kuniharu shimizu | 2008/04/05 22:17
我善坊さん
ふふふ、負けてうれしい、はずかしゲーム。(笑)
楽しいコメントどうもありがとうございます。
昨夜、この記事をアップしたときにはまだこの特集、ランキングしか目を通していなかったのですが、「ベスト100検証座談会」という記事があって(出席者は加藤典洋、青山南、豊崎由美の三人)そのなかで、豊崎さんが、やはりこのゲームのことを話しておられました。我善坊さんの「点」はこれかしら、それともあれかしら、と考えるのもなかなか楽しいですね。
投稿: かわうそ亭 | 2008/04/05 22:25
kuniharu shimizu さん
ところがどっこい、このベスト100は海外小説のはずなのに、なぜか57位に『源氏物語』が入っているの。(笑)
もちろん、作者は紫式部。
まあ、わたしも読むとすれば、田辺聖子か瀬戸内寂聴か与謝野晶子か、いずれにしても現代語訳で読むと思うので、翻訳小説という見方もできるかもしれないんですけどね。でも『源氏物語』を海外小説扱いするとは新潮社さんも大胆な。(笑)
投稿: かわうそ亭 | 2008/04/05 22:37