俵万智の涙
「短歌」5月号の連載「語る短歌史」から。(岡井隆の談話、聞き手は小高賢)
岡井 (略)それで、早速、先にも言ったように豊橋に呼んだのです。まだ二十歳ぐらいでしたが、わたしが対談の相手をしたのですよ。そのときのシンポジウムにはたしか坂井修一君もいたはずです。その会場に「短歌研究」の新人賞を受賞した佐久間章孔君がいましてねえ。
小高 たしか俵さんを泣かした事件ですね。有名な。
岡井 うん、彼が泣かした。どうやって泣かしたかというと、「あなたの歌というのは保守、超保守だ。つまり今の短歌を革新するというものではない。思想的にも全く保守だ。こんなもので文学が変わるわけがない」と言っていじめたのです。俵さんは頭のいい人だけれど、保守ファンダメンタルだなんて言われたって、そりゃあ、俵さんには通じないですよ。それでもう、しようがないから泣いちゃった。
それに対して周りから、たくさん同情票が出るかというとそうでもなかった。そこらあたりはむかしからの歌壇の伝統ですね。新人に対する扱いは、戦争直後の近藤芳美しかり、昭和三十年代の塚本邦雄しかり、そのあとの寺山修司もそうでした。たしかに新人は明日はどうなるか、わからないからね。
この出来事は 1987年6月のことらしい。
その前年に『八月の朝』で角川短歌賞を受賞。『サラダ記念日』がベストセラーとなった年である。岡井の談話では、「二十歳ぐらいでした」とのことだが、正確にはこのとき俵は二十五歳であります。
岡井の言葉からは、この佐久間章孔の俵批判は新人に対する「いじめ」みたいなもんだったのよというニュアンスが伝わりますね。歌壇の伝統である、ト。ははは、おっかねえ伝統だ。
鈴木竹志さんの「竹の子日記」に、もうすこし詳しい内容がありましたので、興味のある方はご参考まで。
【こちら】
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