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2008/05/06

つぐない

Atenment 午前中仕事があったので、テキトーにすませて、茶屋町の蕎麦屋で鴨せいろを食べて、ロフト地下のテアトル梅田で「つぐない」を見る。
たまたま両隣がわたしと同年輩の(すなわちややご年配の)ご婦人。どちらも途中から肩をふるわせながら必死に涙をこらえておられましたが、ついにラストで盛大な歔欷となりました。いや、まあ人のことは言えない。わたしも、ラストでなにが明かされるかちゃんと知っているにもかかわらず、おもわず泣いてしまった。

というわけで、わが愛する『贖罪』の映画化ですが、結論から言うと、これはよかった。原作の細かなところをきちんと映像化してみせてくれた。小賢しいブンガク的な表現で小説と張り合ってみせるようなバカをやっていない。監督のジョー・ライトは「プライドと偏見」もよかったけれど、この「つぐない」はたいへんすぐれた娯楽映画として楽しめる。わたしは、ゲージツ映画は嫌いなので、こういう明暗くっきりとしたドラマは大好きであります。

ブライオニーを3人の女優が、13歳(シアーシャ・ローナン)、18歳(ロモーラ・ガライ)、老女(ヴァネッサ・レッドグレイブ)と演じているのだが、どの年代のブライオニーも捨てがたい。なんの説明もないにもかかわらず、18歳のパートになったとたんに、それまでの5年の歳月の意味がなんであったのか、ブライオニーの抑制された表情によって観客に伝わる。

もうひとつ、驚いたのは、ボビーがたどりつくダンケルクの場面。なんとこのシークエンス、延々とステディカムで撮っていくのですが、信じられないことにほとんどワンテイクの長まわしである。(パンフレットの解説によれば3テイクだとか)
この箇所は、もちろん意識的なものですから、きちんと意味を考える必要がある。つまりこれは、この情景を「見ている」目が瞬きもせず、じっと精魂をかけて注視していることを表しています。だれが見ているのかは、原作を読んだ人にはわかっていますし、映画を見終えた観客もできればこのシーンをもういちどふりかえる値打ちがあるでしょうね。

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コメント

原作のペーパーバックを読み始めて、出だしに今ひとつ誘うものがなく、しばらく放ったらかしていました。こういう記事を読むともう一度戻ってみようとすぐ考えてしまいます。頭の回路が単純なのでしょう。涙腺もゆるいほうです。

投稿: 水夫清 | 2008/05/06 21:44

いやいや、わたしももう涙腺ゆるみっぱなしでして、泣くこと泣くこと。(笑)
『贖罪』は、前半部分をすこし我慢して息をつめるようにして読んで行くと、後半は一気読みのページターナーに様変わりするという傑作です。
むかし書いた感想をこの記事にリンクさせておきましょう。

投稿: かわうそ亭 | 2008/05/06 22:12

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