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2008/08/13

不快でも規制すべからず

今回のエントリーは、(いつのもことながら)話の筋が見えにくいと思うので、先に結論を書いておきます。
ストリートビューは規制すべからず。

日本でのサービスがはじまったグーグルのストリートビューについては問題視する声も多い。
しかし、ざっと見た感じではこれをあきらかな違法行為として告発するようなトーンはあまりないように思う。
「車道から見える景色を撮りましたが、それがなにか?」と言われれば、それは文句をつける筋合いのものではないわなと、みんな引き下がっているようでありますね。

しかし、ポイントはたぶんふたつあって、ひとつは「量は質に転化する」ということ。車道から見えるものを個人が数枚写真に撮ることは違法ではないということと、ストリートビューが実現しちゃったことはあきらかに質の違う事象であるということはおさえておく必要があるだろう。

もうひとつは、この技術とサービスを規制するということはいいのだが、その場合、特定の選ばれた少数だけがある技術を独占し、一般の人間は使えないようにすることが、結局みんなのためだというロジックをどのレベルまで認めるべきかということだと、わたしは思う。

ストリートビュー規制論で説得力があるのは次のような意見だ。

なるほど、いまだってもし相手の住所地番を知っていれば、現地に行ってどんな感じの町に住んでいるのか、あるいはその人の家を外から見ることはできるだろう。しかし、ふつうそんなことはしないのは、品位や礼儀もあるだろうが、そこまでするのがめんどくさいからである。なにもそこまでしなくても、と普通は思う。ところがこのストリートビューはなにしろグーグルマップで住所を入力すればその人の家の周辺や(運がよければ、あるいは悪ければというべきか)その人の家そのものが居ながらにして画面に現れるので、敷居が極度に低くなるのね。そうやって、このサービスさえなければ知られることのなかった自分の住環境が人に知られてしまうじゃん。違法じゃないかもしれんが、わたしは不快だ、気持ち悪い——

しかし、これは、こういう技術が可能であることをすでにわたしたちは「見て」しまったわけだから、要するに、一般の人がこれを利用するのは嫌だと言ってるだけの意味しかない。逆に言えば、特定の人ならいいですと認めていることになる。だって、ここまで情報の非対称性が極端だと、仮にグーグルが、わかりました、あのテクノロジーはもうすべて破棄しましたと言ったって、あるいはグーグルが実際に破棄したったって、別のカネとコネに不自由しない組織がやるにきまっている、とわたしたちにはわかっているから。
とすると、おそらく問題はその特定の人をあなたは信用しますか、という問題になるはずだ。

あるいは規制すべきだという人は、おそらく二種類あって、この技術自体はいいのだが、せめてそれはクルマがびゅんびゅん走っている大きな通りだけにして、路地みたいなところはやめてよという人と、いやなにしろ一般の人が利用できるサービスとして公開されていることが「気持ち悪い」わけだから、全部やめてくれという人に分かれるだろう。(たぶん大半は前者だとわたしは思う)
しかしここでも問題は同じで、なるほど、みんなが嫌だっていうから二車線の道路以外は全部見れないようにしました、とグーグルがアナウンスしたら、みんな、ああよかったよかったとなるんだろうか。
結局、ふつうの人が見れないところも、ほんとうは見れるんだよね、ということはみんなわかっているので、特定の人が使うことはかまわないか、あるいは、もうだれも使っていませんよと言ってくれさえすればとりあえずそれでいいということになるのではないかなあ。ここでの特定の人たちというのはまあ端的に言えば、政府ということになるね。

しかし、わたしはそれがいいことだとは思わない。
わたしの考えを言えば、これは万人に公開を続けるべき技術だと思う。好き嫌いではない。これを規制すること、政府だけがすべてを見ることができ、一般国民はだめだけんね、というやり方は、政府にとって「ごっつぁんです」というだけのことに過ぎない。しかし、政府は合法的に特定の集団に(宗教であれ思想であれ)コントロールされうるものである。そんなに信用してやるようなものではない。国民にとって政府とは、できるだけ性悪説で疑って、最後の最後に信頼するしかない、そういうものである。

特定少数の人間だけがあるテクノロジーを独占するというのは、軍事技術(核、毒ガス、細菌など)やある種の生命科学については、これを認めるにわたしはやぶさかではない。しかし、このストリートビューはそういうテクノロジーとは位相が違う。支配の便利な道具にはなるが、万人がアクセスすることで人類の絶滅につながるようなものではない。
ゆえに、規制にはわたしは反対。

さてこの技術の次に向かうのはどこだろうか。以下はあまり冗談のつもりで書いているわけではない。
グーグルがトヨタにこんな話をしているかも。
ねえ、すべてのクルマに360度のカメラアイを付けて、GPSと連動させて走らせましょうよ。ストリートビューはリアルタイムになって、クルマはストリートビュー情報のフィードバックを受けて安全な自動走行ができるんじゃない。これからはクルマを街全体のセンサーにするんだよ——。

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コメント

賛成です。
(防衛庁や警察の人が)使用方法を誤って大変なことになったのでウィニーを開発した人を捕まえてしまえとなった時は驚きました。では最近、使用方法を間違えて人を殺す人が多いから包丁の使用を禁止しましょうか?うまく付き合うことを考えた方が良いと思います。
 とはいえ、カメラ付きのプリウスが自宅の前を走ったら手を振るか、隠れるか、今はまだ決められませんが。

投稿: たまき | 2008/08/21 17:28

うーん、そうだなあ、なにしろ一度撮られると当分更新はされないだろうから迷いますねぇ。(笑)逆にグーグルのステッカーを付けたプリウスを激写してFlickrにアップしますか。

投稿: かわうそ亭 | 2008/08/21 22:23

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受信: 2008/08/22 16:07

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