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2008/08/06

好きな本

いつも本は図書館で借りて読む主義だが、さすがに洋書の場合は図書館の本でというわけにもいかないので買って読むことになる。

そうして読んだ洋書の中で、とくに愛着のあるのは1996年に出た、マーガレット・アトウッドの『ALIAS GRACE』(Doubleday)である。
最近、『またの名をグレイス』という邦題で岩波書店から上下二巻で出版された。朝日新聞の書評は阿刀田高が担当していたが、うーん、あんまりうまくないね、この人。おっ、これ読みたい、という気持ちにならんもの。

Atwood_o_2 もっとも、読後、これはすごい傑作だと思った記憶だけはあるが、作品の細部まではわたしも憶えていないので、感想めいたことを書くつもりはない。
書こうと思ったのは、なんでこの本に愛着があるかということで、傑作であったという理由の他に、この本の装釘がたいへん美しいからである。
写真の上がラッパーをかけた状態、下がラッパーを外した状態。ラッパーで鉄格子に入った女の顔は、ラッパーを外すと豊かな深みのある肖像画になってあらわれます。アトウッドの作品の手法を装釘として見事に表現していると思う。

洋書のハードカバーでは、小口をわざと裁断せず、ぎざぎざになっている状態のものがあるが(あれ好きなんだよね)この本もそのタイプ。頁の紙質もはんなりと柔らかめでこういう本で読書ができるのはほんとうに幸せな時間なんでありますね。
本は要は中身だろ、中身の文章を読むんだから、装釘やら紙質なんて意味ないじゃん、という意見にも一理あるが、経験は、読書とはそういうもんではないことをわたしたちに教えていますな。

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コメント

ほんと、素敵な本ですね、著者も美人!
私が、ネット発注した岩波の訳本は、まだ届いていません。訳本が出るのに、10年以上かかったなんて、ちょっと遅いんじゃないでしょうか。怒る権利は私にはありませんけれども。
ついでに、同著者の『侍女の物語』というのも、注文しました。勤務先で昼休みにポーランド語を教えてくださった先生が、話題にしていたことを思い出して。すでに、17、8年ほど前の話ですが。
御紹介ありがとうございました。

投稿: Wako | 2008/08/06 20:13

『侍女の物語』もなかなか面白い小説ですね。SFっぽい設定ですが、案外ありそうなところが怖かった。どうぞお楽しみくださいませ。delicious

投稿: かわうそ亭 | 2008/08/06 20:50

私も英語の新刊書を注文する時は英国にするか米国にするか選択した時期がありました。

ぺーパーバックならばどちらでも良いと廉価な米国製が多かったのですが、時代を経ると紙の質の悪さが顕著です。

やはり、本は手触りとか装丁がよくないと高額な新刊書にはなかなか手が出ません。プリントメディア等が、デジタル配信に対抗して、今後とも残っていくには、文章の質だけでは駄目なのですね。

投稿: pfaelzerwein | 2008/08/08 02:18

ちょっと前の朝日新聞に、日本ではもう雑誌が壊滅的な状態で、日本の雑誌の業界団体の代表(日経BPの人だったかな)がドイツでの国際会議に出たら数年前まで、雑誌のコンテンツをネット上で有料にするか無料にするかの議論があったのに、今回はほとんど無料で提供する(インターネット広告で稼ぐのね)メディアばかりで驚いたとかなんとかいう発言がありました。日本の新聞や出版社が発信する程度の記事が有料でも読まれると思っていたらしいことにこっちは驚いたけど。(笑)

まあ、やはりわたしは、本は本で読む世代であることに満足しています。本を電子的な映像として読むなんて、まっぴら御免こうむりたい。

投稿: かわうそ亭 | 2008/08/08 19:30

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