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2008/08/10

恋の隠し方

2008_0810 今度出た日文研の光田和伸さんの『恋の隠し方 — 兼好と「徒然草」』(青草書房)はすごくいいですよ、とある方に教えていただいたので、BK1のポイント(去年のハリポタ7書評分の3千円)で購入した。たまたま今日の朝日新聞の書評にも出ておりましたね。
たしかにこれはたいへん面白い。

「徒然草」は高校生のときに受験用の小さな版形の本(文庫本よりさらに小さかったように思う)で読んだだけである。あれはどこのなんというシリーズだったんだろう。古文の副教材みたいな本だった。それもたぶん姉のお下がり。(笑)
もとより、立派な本ではないが、「徒然草」と「枕草子」と「方丈記」はこれで拾い読みをした。「徒然草」はけっこう面白くて、全部は読んでいないと思うが、あらかた読んだような記憶がある。
今回、光田さんが引いているところも、ああそういえば、ここ読んだなあ、と思い出したりしたが、たかだか十七歳の頃のわたしがどんな感想を抱いたかは思い出せない。

「恋の隠し方」という題名は、吉田兼好が「徒然草」のなかに自分の愛—結ばれることのなかった女人との恋の始まりから、その人の死を目前にした別れまでを短編小説のように、こっそりと忍ばせていますよ。ほら、この段とこの段をこんな風につないで、そこにこんな当時の男女関係の常識をいれてもういちど見直してごらんなさい、ほらね。なんて感じの内容で、なるほどそういう手があったかと新鮮な驚きに打たれますな。

以前、このブログで上田三四二の『徒然草を読む』(講談社学術文庫)を取り上げて、
「もし一瞬一瞬を死の側から照らして、それを愛惜し、時間そのものを無限に微分していくならば、人は一瞬という時間の中にどれほどの時間でも折り畳んでいくことができる、というのが上田が徒然草から引き出した、時間論なのである。」という記事をかいたけれど、それは、いまはこの世にいない、かつて心から愛した人を愛惜するという記憶の方法論に通じるものかもしれませんね。

本書には、この秘められた兼好の悲恋をみごとに再構成してみせる論考以外にも、食べ物の話、東西論、狂気について、など現代のわたしたちの社会にも通じる鮮やかな切り口があって、わたしはとても感心した。
なんでも本書は、この出版社の「古典ミステリー」という企画の第1弾だそうで、第2弾は『あなたは「ほんとうの芭蕉」を知っていますか?』、この秋発売だとか。「学者が書く、初めての芭蕉〝隠密〟説」と巻末の広告にありました。はは、こっちも楽しみでありますね。

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