ジェイン・オースティンの読書会
『ジェイン・オースティンの読書会』カレン・ジョイ・ファウラー(白水社/2006)は面白かったけれど、ほんとうはジェーン・オースティンの六つの長編小説をきちんと読んでいないと、にやりと笑うところを読み過ごしてしまうはずなので、おそらくわたしは十分に楽しんだとは言えないんだろうなあ、と思う。
「一般文学読者にジェーン・オースティン文学を解説することは、ある意味では簡単だともいえる」とは中野好夫のコメント(『自負と偏見』訳者解説)である。というのは、彼女の作品はつまるところ『Sense and Sensibility』、『Pride and Prejudice』、『Mansfield Park』、『Emma』、『Northanger Abbey』、『Persuasion』の6作品にかかっており、他の作品はほとんど問題にする必要がないこと。またこれらの六作品についてもほとんど優劣のない(読者の好みはとうぜん異なるにしても)ものだから、ということであります。
つまり言葉を変えて言えば、この六つさえ読んでいれば、たとえ相当にうるさ型ぞろいの「読書会」であっても、大いばりで出席できるということになるのでありますね。ということで、この『ジェイン・オースティンの読書会』という長編小説は、六作品をモチーフにして、ジェーン・オースティンの読書会を毎月一回開催することにした六人(五人の女に男一人、ただし女ひとりはゲイだけど)の人生模様とまあ当然、恋の成り行きが語られるという洒落た趣向になっていて、さらに作者はもともとSF畑の出身だということもあって、わたしも読書の入り口がそうだったもんだから、よけいこの作品にはぐっとくるところがあるんだなあ。
ジェーン・オースティンの六作品を全部読んだら、もういちど本書を読んでみるといいかもしれない。すくなくともP&Pの読書会の章は、にやにやと楽しむことができたので、たぶんほかの章(それぞれ作品ごとの章があるのね)も同じような趣向があるはずだと思う。
ところで、本書にはいろいろ「おまけ」がついていて、そのひとつがジェーン・オースティンに対するいろんな作家のコメント。とくにおかしいのが、マーク・トゥエインで、この人、とにかくオースティンが嫌いで仕方がなかったのね。こんな発言があるそうです。
『自負と偏見』を読むたびに、彼女の死体を掘り起こして脛骨で彼女の頭蓋骨をひっぱたいてやりたくなります。
わたし、これはもしかして、同じ作家として、ここまで面白い小説を書かれてしまったことが悔しくて、なんていう褒め言葉かしらと首を傾げたんですが、本書のべつのところにやはり マーク・トゥエインの言葉が引用してありまして、それによれば——
この図書館にはジェイン・オースティンの本もまた、一冊もない。それだけで、ろくに本のないこの図書館が、そこそこましな図書館になっている。
はは、こりゃ、ほんとに大嫌いなんだ。(笑)
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コメント
私のブログのタイトルを「Melting Pot」に変更しました。
NeRdYでんでん虫 は没にしたので お知らせします。
中身もアドレスも相変わらずですが。
私のブログをリンクしてくれて有り難う。
投稿: Nerdy | 2008/09/08 09:37
こんにちわ。いつもどうも。
サイドバーの BLOG PEOPLE のほうもさっそく訂正しておきますね。お知らせありがとうございました。
投稿: かわうそ亭 | 2008/09/08 23:05