ボビー・フィッシャーを探して
DVDでスティーヴン・ザイリアン監督の「ボビー・フィッシャーを探して」を見る。
ストーリーはいまひとつだが、とにかくこの作品は映像が美しいですな。
とくに冒頭のチェスに雨があたるシーンは印象的だ。こんな美しいゲームは見たことがない。
CGによってあらわにされたのっぺらぼうの絵をわたしたちは見せられすぎている。この作品を見ると、映画というものが、もともと光と影からなっている立体的なものであることをあらためて思い出す。
撮影はコンラッド・L・ホール。
なにしろ陰影に富んだ奥の深い映像なので、よく眼を凝らして見るといろいろ面白い細部がみつかる。
たとえば主人公が森の中で拾うナイトの駒だ。ほとんど影になって、ちらっとしか見えないが、たぶん、あれは大英博物館に収蔵されたルイス島のチェス・ピースのレプリカだと思う。わたしも一組持っている。
ワシントン・スクウェアでストリート・チェスの真剣師をやっている男(ローレンス・フィッシュバーン。マトリクスのモーフィアスね)が、野球のボールとそいつを交換しようという手つきをしてみせるシーンがあって、その夜(ジョシュの7歳の誕生日である)父親のプレゼントの野球のミットをかたわらに、ベッドの中でジョシュは懐中電灯でこのナイトを照らして、いつまでも見飽きないというシークエンスにつながる。そうか、少年は野球のボールよりチェスピースを選んだんだな、とわかるのだが、これが映画の基調となっていることは言うまでもない。
ジョシュの母親をジョアン・アレン(ボーン・シリーズのCIA管理官のパメラ)がやっていて、とてもいい雰囲気をだしている。少年の師匠を引き受けるブルース・パンドルフィーニ役にはガンジーでアカデミー賞のベン・キングズレー、と脇をしめる役者も重量級。ちなみにパンドルフィーニはナショナル・マスターで『ボビー・フィッシャーの究極のチェス』の名著がある。
ところで、おかしいのはこの映画、カメオでトニー・シャループ(名探偵モンクさん)が出ているのでありました。父親がはじめて息子をNYのチェス・クラブの支部につれて行く場面で、7歳の子供と対局してあっさり負ける男の役。これまた印象的な映像の美しい箇所でさすがにうならされる。
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