須賀敦子10周忌
「芸術新潮」10月号の特集は須賀敦子。没後もう10年になるんだな。
とくに印象深いのは、全集未収録のエッセイ「沈黙の空間—舟越桂さんの作品」である。
読んでいるうちに、ああ、この文体は須賀敦子以外の誰のものでもないというあたりまえのことにいまさらながらうっとりとする。
今回はじめて収録された文章の初出は1995年、彫刻家、船越桂の作品集『水のゆくえ』に書いた解説だったようだ。
船越桂は須賀の『コルシア書店の仲間たち』のカバーでわたしもなじみがある。
彫刻というものに、さほど興味をもっていなかった須賀さんがローマに行くのだというと「友人」がこんなことを教えてくれた。
・・・・かれこれ四十年になるむかしのことだ。友人はこんなこともいった。彫刻は詩にいちばん似ているとぼくは思う。だからきっと、きみは好きになるよ。彼は、彫刻が叙情詩に似ているのは、どちらもが、人や物のある一瞬の動きや感情をとらえて、これを永遠の表現にとじこめようとするから、ともいっていた。
船越のこの作品には「言葉が降りてくる」というタイトルがついている。
出版社と打ち合わせをするときにはじめてこの題名に気づいた須賀さんはあらためてこの作品を自著の装釘につかうことができて嬉しかった。
須賀敦子の文章を読み返したくなって、そういえばたしか家人が文庫で揃えていたな、とテキの本棚を漁ったが見当たらない。訊けば、あら、こないだ近所のブックオフに売ったわよ、とのこと。とほほ、きっと、その本をわたしがまた同じブックオフで買うような気がするんですけど。(笑)
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コメント
かわうそ亭さん、こんにちは。
ご無沙汰しておりました。
よく、お邪魔はさせていただいているのですが(^^;
比較的最近、舟越さんの作品展を観たこともあって、私も作品集へ寄稿されたエッセイが、ことのほか興味深かったです。
本当、須賀さんの文章には、何度読み返しても、うっとりとさせられるメロディーやリズムがありますよね。
早速、ブックオフで「須賀さん本」取り返してきてくださいね~(^^)
TB送らせていただきました。よろしくお願いします。
投稿: snow_drop | 2008/10/24 09:46
snow_drop さん
TBどうもありがとう。
舟越桂さん、東京都庭園美術館の作品展をご覧になったんですね。いいなあ。関西でもやってくれないかな。
投稿: かわうそ亭 | 2008/10/24 21:21