「ESL Podcast」はおもしろい
なにしろ人間がもうすっかり旧式になっているのだろう、なにかにつけて自分が10代のころ(1970年代前半)のことと、いま現在のことをくらべて、ひとりで感慨にふけったりすることがある。おっさんの懐旧談なんか、うっとおしいだけだと思うので、ほんとうは人に話したりすることでもないのだろうけれど。
たとえば、英語で書かれたテクストやリスニングのための材料について。
中学ではじめて英語を習った田舎町の少年にとって、ホンモノの英語に触れる機会というのはとても貴重だった。学校で日本人の先生が、発音のお手本を聞かせてくれても、なんだか信用できなかったし(もっともいまから思うとそうバカにしたものでもなかったような気もする)身近にネイティヴ・スピーカーがいるわけでもなかったので、たぶんこの世代の多くの人がそうしたように、NHKラジオの基礎英語、続基礎英語、英会話なんてプログラムを早朝と、夕方の再放送の二回聞こうなんてがんばったものだ。
ちなみに、わたしがはじめてしゃべったネティヴ・スピーカーというのは、いまから思うとちょっとおかしいのだが、同世代の女の子である。名前は忘れてしまったけれど、シカゴからきたプラチナブロンドのとてもチャーミングな子だった。彼女が日本でホームステイしていたおうちのご主人とわたしの父が知り合いだったので、同じ年頃の男の子がいるから話してごらん、てなことだったのだろう、我が家に連れてきたのであります。もちろん、まだ中学生ですからね、ほとんど会話になんかならなかったし、相手がどうみてもジャネット・リンかマルレーヌ・ジョベールみたいな美少女でしたからね、トトロのカンタくん状態。(笑)
閑話休題。
そんなふうに、英語で書かれたテクストといえば学校の教科書や市販の参考書だし、リスニングの材料としてはラジオ講座の録音くらいしか身近にはなかった。あとは音楽のアルバムを歌詞を見ながら聴くとかね。でも、そんなふうに材料があんまりなかったにしては、あるいはあまりなかったからかえってよかったのかもしれないが、曲がりなりにも、しばらくするとある程度はわかるようになったものだ。
ところで最近、これはいいなあ、と思っている教材をひとつ。
ESL Podcastという。(こちら)
ポッド・キャストでこいつを購読して、iPodで聴いている。過去の放送分もたくさんあるのでそれもダウンロードできる。
BBCやCNNやABCのニューズ番組もいいのだが、わたしのレベルではちとしゃべりが速すぎて、ついていけないことが多い。その点、このプログラムはセカンドランゲージとして英語を独習する人たちを対象にしているので、ゆっくりと明瞭な発音でしゃべってくれるのですね。わたしでもしっかり聞き取れて、トピックの流れについていける。しかも、話題が、なかなか面白くて、ひねりもあり、あきがこない。そしてなにより、すべてただだというのが素晴らしい。
通勤や休日に歩く時間はこのプログラムを聴くことが多いけど、とてもよくできた内容だと思う。
ちょっとした会話をゆっくりパラフレーズしながら噛み砕いて説明し、最後に普通の会話のスピードで聞き取るようにした内容が定番なのだが、別に「English Cafe」という放送のコラム版みたいなプログラムもあって、アメリカの有名な人物をシリーズで紹介するとか、歴史、地理、人文などのアメリカ人にとっては常識だが、あまりきちんと説明されていない(常識ってかえってそういうもんだよね)ことを、ゆっくり丁寧に説明するものもあって、わたしにはこれがとても面白い。
たとえばこんな話題。
ニューヨークっ子はニューヨーカー(New Yorker)。ならシカゴっ子はなんて呼ぶ?ロサンジェルスだったら?
答えは、シカゴアン(Chicagoan)にアンジェリーノス(Angelenos)なんだって。知ってました?こういう呼び方は“demonyms” というのだそうです。きまったルールはないけど、なんとなくみんな覚えてしまうというようなものらしい。
いまの時代、もし子供のときに英語に興味をもったら、英文テクストでもリスニングの材料でも、あるいは生きたネイティヴ・スピーカーでも、好きなだけふんだんに活用することができるのだろうな、とちょっとうらやましいような思いがする。いま、わたしがあのころの年代の少年だったら、もうすこし「出来る」ようになったかなあ、なんてね。
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コメント
お久しぶりです。英語ネタなのでコメントします。
私、帰国子女のおっさん版です。15歳でハワイに移り住み
さっそくホノルルの高校へ編入。オバマさんが通った学校(ハワイ一番の私立)の近くでした(当方は公立)。
日本では学校の先生に呼びかけるとき、「....先生」といいますが、
現地ではどう言うのでしょう。ここでさっそくつまずいてしまいました。私はそのまま直訳で「teacher」と呼びかけました。
すると、"Mr.なんたら"と言いなさいと訂正されました。女性の先生の場合はMiss or Mrs.になるわけですね。(当時はまだMrs.という表現はありませんでした)。
大統領でも、Mr. Presidentですね。この使い方をまず勉強したしだい
です。
以上、遠い昔話でした。
投稿: 水夫清 | 2008/11/12 18:00
やあ、どうもです。
15歳くらいから使う言語ががらっと変わるというのはある意味たいへんな体験ですよね。バイリンガルのみなさんは、いつもさらっとおっしゃっているけれど。
水夫さんの場合は、ふだんは日本での暮らしだから意識のモードは日本語なのかとなと思いますが、夢をみているときは完全に英語モードに切り変わったりしているのではないでしょうか。このあたりはわたしなんかにはよくわかりませんが。
わたしのはまったくでたらめに違いないのですが、ときどき夢のなかで滔々と英語でしゃべりまくっていることもあります。目が覚めてがっかりする。なんだ夢か、って。(笑)
ミスター・プレジデントは、ヒラリーさんがもし当選してたらマダム・プレジデントになっていたのかなあ。
投稿: かわうそ亭 | 2008/11/12 21:38