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2008/12/13

サルが人間にならない日

20081213 わたしが『アメリカン・コミュニティ―国家と個人が交差する場所』(渡辺靖/新潮社)という本をもっていたので、英会話の先生が、ねえねえ、それってどういう内容なのと訊いた。

「ええと、まだ途中だけど、最初にでてくるのが、ブルダホフっていう宗教のコミュニティでさ、著者がそこに泊り込みで取材に行くわけ。で、いろいろ話を聞くと、そこって基本的にはアーミッシュの人たちのような感じなんだけどさ、あんまり宗教こちこちじゃなくて、けっこう普通に現代的な生活もしているのね。怪しいカルトや原理主義セクトみたいに教祖が洗脳するなんてこともなく、逆に、子供たちは18くらいになると一度はかならず外の世界で生活することを義務づけられて、ほんとうにこの宗教的なコミュニティで暮らしたいという人だけが帰ってくることを許されるなんて感じのところらしいのね。聞いたことある?」
「ブルダホフってのは聞いたことないなあ。似たようなコミュニティがあるのは知ってるけど」
「うん、でこのブルダホフに著者が取材に行くきっかけというのが、この人たち、木工家具や玩具製造で日本式の生産管理手法(カイゼンとかカンバン方式とかいうやつね)を取り入れたビジネスをやっていて、そんなに悪くない収益をあげているらしいのね。なにしろ専用ジェットも一機所有しているというから、日本の木工玩具の中小企業よりやり手かもしれない。もちろん収益はみんなで分配して、身の回りの私物以外は基本的に共有という、イスラエルのキブツみたいな生活らしいんだけど」
「ふーん。おもしろいね」
「うん、でも、ぼくが一番面白かったのはね、この著者がコミュニティ・ホールで住民といろいろ話をするわけね。で、かれが、みなさんは進化論についてはお認めにならないわけですか、なんて質問をしたらさ、みんな大爆笑して、進化論?あのサルが人間になるってやつ?ははは、あれはひどい話だよね。そんなことってあるわけないじゃないなんてみんなが口をそろえて言うんだって――」

とここまで話したわたしを、さえぎって先生、
「うん、それは絶対そう。ボクもそう思うよ」

生徒はわたしをいれて三人なんだけど、みんな、ちょっと絶句。
「あー、というとキミも進化論はウソだと?」
先生はわたしより6歳ばかり若いのね。
「いや、進化は事実だと思うよ。でもそれは生物が環境に適応するためにセレクションされるという事実にすぎない。サルが人間になる?絶対にありえない」

ということで、いつもお気楽な映画の話やテレビドラマの話なんかをしてるのに、一気に一神教の世界観との対決に。いや、ほんとうはこういうのはご存知のようにタブーなんですが、まあ、年に一回くらいはいいか、というわけで。

当然、時間切れ。ノーサイド。(笑)

「あー、みんな、今日は面白かったねえ。今度は聖書もってこよっと」と先生。
「お断り!ここでは英語というアドヴァンテージがキミにはあるんだからね。今度やるなら日本語でやっつけたるど」

ときどき、クリスチャンというのがわかんなくなるなあ。(笑)

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コメント

私は創世神話にも進化論にも同じ程度に病的なものを感じます。すいません。

投稿: 葉月 | 2008/12/15 11:38

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