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2009/02/04

茂吉の歌集のこと

先日書いた岩波文庫版の『斎藤茂吉歌集』による第一歌集から第十七歌集までの順番は、基本的に作歌年代を念頭においた編年体になっている。

不明にして、茂吉自身が、第四歌集のなになにとか第十歌集のなになにというように呼んだのかどうか、わたしは知らない。
しかし、この岩波文庫版の作品収録のもととなったのは、岩波の『斎藤茂吉全集』であり、この全36冊の全集第一回配本は1952年で、茂吉は1953年まで生きているので、こういう歌集のナンバリングには茂吉自身の意図があったとみていいのではないかと思う。
もちろん各歌集のなかの歌が単純に時系列に連なっているということではないし、また歌の選び方、配置の仕方も、あくまで文学的な観点からなされていることはいうまでもない。

だが、茂吉にはやはり、自分の人生をすべて自分の歌で覆い尽くしたいというつよい意志があったのではないかと思う。そのひとつの証拠が、作歌時期と歌集発行時期の間隔が、比較的短いものと非常に長いものとがある、という事実である。
下の表にまとめてみた。1から17までの歌集の作歌時期と歌集の発行時期、そしてその間隔がどれくらいあったかを、エクセルにいれてみた。(ただし間隔はあくまでめやすなので実際には最大プラスマイナス1年の幅があるだろう)
一見してわかるように、第三歌集『つゆじも』から第九歌集『石泉』までの七つの歌集の間隔が非常に長い。(黄色の部分)
『つゆじも』などは詠んでから二十五年たってやっと歌集にまとめたことになる。この執念深さはちょっとただごとではない。ここまで時間的な間隔が空いていると、よく言えば記憶の結晶作用がおこるだろうし、悪くとれば、捏造とはいわないまでも、選歌の過程で過去はゆがめられてしまうだろう。だから、茂吉の歌を単純に精神史として解釈するのは間違っているのだろう。

Mokichi1

上記のエクセルの表を、歌集の初版の年月日順で並び替えてみた。どういう操作を茂吉がしたのかが、だいたいわかる。1945年の敗戦より前の茂吉の歌集は6冊。戦後は11冊。しかしその戦後の11冊のうち8冊は、作歌時点は戦前である。
1945年8月15日の敗戦が、この大歌人の一生に与えた意味が見えるような気がする。

Mokichi2

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