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2009/04/02

淡酒亭断片帖

草間時彦の『淡酒亭断片帖』(邑書林)は十年ほど前に出た本。もともとは、同じ石田波郷門の後輩である山田みづえが主宰誌「木語」を創刊するお祝いに、エッセイを一本書いてあげようというのが始まりだったようだが、結局、1994年から1998年まであしかけ五年、五十回の連載となったらしい。(「木語」は2004年に終刊)
気軽に書いた身辺雑記なので、お読み捨て頂きたい、なんてことが「あとがき」に書いてある。「読み捨て」はともかく、たしかに飄々とした著者の日常が垣間見えて楽しい読み物だ。
草間時彦は1920年の生まれなので、このエッセイを書いていたのは、七十代の後半ということになる。女の子のいるバーに案内されると、横に座ったホステスの太ももにすぐ手を載せるくせがあったそうで。(笑)

バーで隣に座った女の子の腿に手を載せてサマになるには相当の月謝を払わねばならない。サラリーマンのとき払った月謝が今、役に立っているのかも知れない。

はは、ぬけぬけと言ってくれるよなと思うが、こういうジジイ、わたしはかならずしも嫌いではない。

ところで本書の中に1996年に書いた「リラダン伯爵」というエッセイがある。
俳句愛好者には言うまでもないことだが、このリラダン伯爵は高柳重信ですね。十二月とあるから、前の年の1995年のことでしょう、高柳重信の十三回忌ということで「しのぶ会」が銀座のレストランで行われた。会費は八千円で全員が払い、特別扱いはなしというスタイル。百人にすこし欠ける出席者で、中村苑子(奥さん)や高柳の妹さんがスピーチをし、閉会の辞は和田悟朗がつとめた。たいへん気持ちのよい会合だった、と草間さんは書いている。やはり高柳の人柄だろう、と。
席は決まってはいなかったので、四人席にたまたま相席した人とおしゃべりをすることになる。草間さんのテーブルは、高屋窓秋、松崎豊、有馬朗人という顔ぶれだった。
——と、ここで、わたしは思わず「へえ」と驚いた。高屋窓秋といえば、〈頭の中で白い夏野となつてゐる〉とか〈ちるさくら海あをければ海へちる〉なんて句は、わたしでもすぐ口にすることが出来るが、いずれにしても現代俳句史のなかでお目にかかる人のつもりでいたので、こんなかたちで名前をみると、おやま、まだこのときご健在であったのか、と驚いた次第。
草間時彦のエッセイにもどると、パーティのお土産は高柳の句のテレフォンカードだった。

月下の宿帳先客の名はリラダン伯爵  重信

草間のお返しの挨拶句。

リラダン伯爵三鞭酒どうぞ年忘れ

高屋窓秋、1999年没、八十九歳。草間時彦、2003年没、八十三歳。

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コメント

はじめまして。

とても素晴らしい内容の読み応えあるブログ、楽しく読ませていだたいております。

お気に入りに登録させていただいたので、今後ともよろしくお願いいたしますhappy01

投稿: | 2009/04/04 11:20

こんにちわ。俳句のおかげでご縁ができたようですね。コメントどうもありがとうございます。
わたくしのほうもBLOG PEOPLEに加えさせていただきました。今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: かわうそ亭 | 2009/04/04 20:46

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