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2009/05/12

瀬戸正洋さんの俳句

2009_0512b6 ある方から瀬戸正洋さんの『俳句と雑文A』(邑書林)という本を貸していただく。
この瀬戸さんという方のプロフィールも、俳句歴も、最近の句業も、わたしはなにひとつ知るところがないのだが、俳句はたいへん面白かった。俳句でオリジナリティをもつことは、むつかしい。いわゆる俳句の骨法というやつが幅を利かせているものだから、結社や句会で鍛えられれば、誰が詠んでも、一応それなりにサマにはなるが、そういうのは要は現代俳句版の月並みに過ぎない。どれも似たり寄ったりであまり面白くないのでありますね。
だから、この人の俳句を読むと、独特の方法で、一種の爽快さを感じる。ははあ、ずいぶんやりたいようにやってるなあ、と喝采を贈りたくなる。ただし、言葉の感覚は、一見乱暴なように見えて、決してそうではない。これも俳諧の精神を背骨にもっている。

ところで邑書林の場合、セレクション俳人シリーズであれば、作者の年譜や略歴、複数の作家論などがあって、理解を助けてくれるのだけれども、本書については、そういうものを意図的に排してつくられている、いたって素っ気ない本だ。なにしろタイトルからして『俳句と雑文A』である。「少女A」かあんたは、と思わず突っ込みを入れたくなりますね。(笑)
「雑文」というのはもちろん謙遜だろうが、正直なところ、「俳人A」でいくなら、これらはないほうがずっとよい。ストレートに句集として出したほうが好感がもてますな。

この俳人のある傾向を強調するために十句ばかり抜いてみた。もちろん、こういうものばかりではないが、俳句に慣れた方なら、たぶん「おいおい」と言いたくなると思います。ま、そこをどう考えるかですな。
なお、帯の文章が非常によくできているので、書き写した。俳句を楽しんだあとで、あわせてお読みください。

市税県税国税菜飯食ひにけり

倒産廃業リストラ減給春埃

拉致と核と餓死と憎悪と朧月

サンドウィッチと珈琲二百十日かな

鶴千代豆千代若宮大路朧かな

ブロッコリと豚の角煮と泡盛と

サーファーと湘南電車と蜜柑かな

月下美人とジャズピアニストと潮騒と

勝ち組と負け組と雁渡りけり

ぶだう酒と仏蘭西麺麭と朧月

頭痛薬胃薬睡眠薬と葱

「日本酒、泡盛、スコッチ、ワインと種類を問わず酒を飲み、つまみは蚕豆や浅蜊、天ぷら、角煮と、どこか日本的である。満身創痍の薬漬けになりながら、通勤快速で毎日職場と家を往復する。そんな中年男が自らの文学的拠り所を探りつつ、十七音に物と物とのミスマッチを刻み、現代人の病理を抉るように予想だにしない哀愁を滲み出させる。きわめて特異でどこまでも俳諧的な新句集!」

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