« 2009年7月 | トップページ | 2009年9月 »

2009年8月

2009/08/27

みそもくそも自民党

朝日新聞の中盤情勢調査によれば、民主は320議席、自民は100議席前後に落ち込む見通しとの報道。
いくらなんでもこれはまずいなあ、と思うのだが、テレビ・コマーシャルで麻生さんが出てくると、やっぱ自民には入れんとこ、とそのつど「決意」を新たにする。
逆効果だと思うので、自民党は即刻テレビCMなんかやめたほうがいいと思うのだが、ま、もしかしたら日本の支配者のみなさんにはなんか別の深い理由があるのかもしれん。(笑)

わたしのみるところ、今回の衆院選については、民主党の政策には首を傾げる点が多い。たぶん大増税になるだろうし、景気も悪くなるだろう、財政はさらに悪化するに違いない。あんまりうまく行くとは思えんよ、てな感じをマニフェスト読んでも受けるのでありますね。
しかしそれでも、結局は民主党に入れるだろうなと思うのは、この政党を支持するからではない。だいいち、民主党の中核は自民党のかつての田中角栄の一派であります。これを第二次経世会と呼ぶ人もいるようですが、あんまり冗談にも思えない。

むかし西宮に暮らしていたころ、王子動物園によく子供を連れて遊びに行った。
ゴリラの檻の前に透明のアクリル板だか強化ガラスだかが据えてありまして、注意書きに自分の糞を投げますのでご注意くださいと書いてありましてね。うーん、これはちとすごいなあと感心した。つまり、ゴリラはおそらくぶしつけで無神経な見物客に怒って自分の糞を全力投球なさっていたのであろう。

今回、もし民主党に投票するとしたら、すくなくともわたしの場合は、この怒れるゴリラと同じ気持ちであります。総選挙で国民の信任を受けてもいない総理たちの無責任な政権たらいまわしや、アル中の閣僚をはじめとする不適格な政治家の言動に対して、無力感を感じていたここ数年の歯がゆさが、いま、一票という「力」をにぎりしめたとたん、むらむらとした怒りに変ってしまったのでありますね。

だがまことに残念なことに、選挙というのは、怒りの対象に糞を投げつけるようなわかりやすい行為ではない。だから、わたしは自民党への怒りを、民主党への支持というかたちであらわさざるを得ないのだが、ところが、たとえそれで溜飲を下げたつもりになっても、たしかに自民党は100議席を割ってざまあみろということですが、それでもほんとうにわたしが落選させたい安倍晋三だの麻生太郎だの中川昭一だのは無事当選してしまうのですね。まあ、せめて中川昭一くらいはなんとか落として欲しいけど、こればかりはいかんともしがたい。
しかし、いうまでもなく、自民党にだって政治家として、役に立つ人材はいるのでありますね、たぶん。
だから結局ここでも、味噌も糞も一緒の場合は、たいてい味噌が割をくって、糞が生き残ることになるのかもしれませんなあ。まあ、その場合は自民党が純度の高いクソ政党になって、さすがに国民に見捨てられるというシナリオもあるかもしれませんねえ。
さて、総選挙まであと実質2日。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009/08/22

森見登美彦『きつねのはなし』

Kitune 家人が大きなショッピング・バッグふたつに文庫本やらコミックやらを詰め込んで、ブックオフに処分に行こうとしていた。ふと見ると一番上に置かれていたのが森見登美彦の『きつねのはなし』。
カバーの絵にひかれたのかもしれない、ちと気になった。本読みの勘である。(笑)
「ねえ、この『きつねのはなし』ってのはどうだった?」
「いいんじゃない。ちょっと気味の悪いはなし」
「ふーむ」
ひょいと取りよけた。

「きつねのはなし」「果実の中の龍」「魔」「水神」の四つの短編で構成されている。連作というほどではないが、それぞれがゆるやかにつながって不気味な雰囲気をうまく醸し出している。とても面白い怪談集であります。

「果実の中の龍」のなかである登場人物がこんなことをいう。

「こうやって日が暮れて街の灯がきらきらしてくると、僕はよく想像する。この街には大勢の人が住んでいて、そのほとんどすべての人は他人だけれども、彼らの間に、僕には想像もつかないような神秘的な糸がたくさん張り巡らされているに違いない。何かの拍子に僕がその糸に触れると、不思議な音を立てる。もしその糸を辿っていくことができるなら、この街の中枢にある、とても暗くて神秘的な場所に通じているような気がするんだ」

「この街」とは京都のことである。なるほど、京都でなければこの怪談は、こういう具合には成功しないかもしれない。伏見稲荷、御霊神社、琵琶湖疏水、煉瓦造の水路閣・・・
なにやら得体の知れぬ邪悪なものが、闇のなかとも薄明りのなかとも知れぬ向こうから、こちらをうかがっていることはひしひしと感じるのだが、それがいったいなんであるのかがわからない。もどかしく、いやな、いやな怖ろしさ。
同じ人物がそのすこしあとでこんな俳句をふとつぶやく場面が出てくる。

 短夜の狐たばしる畷かな

だれの句かは作中ではあきらかにされないのだが、たしかにこれには覚えがあるぞ。だれのだっけと調べてみたら、おおそうだ百鬼園先生じゃないですか。

で、ぽんと膝を打ったね。
なるほど、この得体の知れない恐怖、恐怖そのものが恐怖であるような厭な感じは内田百閒がお手本か。
森見登美彦は1979年生まれ。ほかにはどんなものを書いているのだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2009/08/04

しみじみ読むイギリス・アイルランド文学

 『しみじみ読むイギリス・アイルランド文学』(松柏社)は、以前簡単に感想を書いた同じ版元の『しみじみ読むアメリカ文学』の姉妹編。やはり前回と同じく12人の作家を取り上げる。
さすがにうまいなあと思う作品が多いが、今回は、イギリスとアイルランドを無理矢理1冊にしたところが、かならずしもうまくいっていないような感じを受ける。とくに本書におさめられたアイルランドの短編や詩は、この国の歴史や国民性に根ざしている面が強いようなのでそれだけでまとめたほうがすっきりするような気がする。

例によって、覚えとして収録作のリストを書いておく。前回と同じく印象深かったものに つけておく。

「誰かに話した方がいい」 ベリル・ベインブリッジ/阿部公彦訳
「敷物」 エドナ・オブライエン/遠藤不比人訳
「奇妙な召命」 モイ・マクローリー/片山亜紀訳
「清算」 シェイマス・ヒーニー/岩田美喜訳
「ある家族の夕餉」 カズオ・イシグロ/田尻芳樹訳
「呼ばれて/小包/郊外に住む女—さらなる点描」 イーヴァン・ボーランド/田村斉敏訳
「ドイツから来た子」 ロン・バトリン/遠藤不比人訳
「トンネル」 グレアム・スウィフト/片山亜紀訳
「屋根裏部屋で」 アンドリュー・モーション/田村斉敏訳
「五月」 アリ・スミス/岩田美喜訳 
「はじめての懺悔」 フランク・オコナー/阿部公彦訳
「ホームシック産業」 ヒューゴー・ハミルトン/田尻芳樹訳

| | コメント (5) | トラックバック (0)

2009/08/03

お股の花々

鴻巣友季子さんの『孕むことば』は、マガジンハウスのPR誌「ウフ.」に3年間連載していた子育てエッセイをまとめた本。なかなか面白かった。
小さな人が「だあだあ」なんて喃語から、だんだんと意味のとれる単語をしゃべりだし、やがて「おんも・いく」とか「わんわん・いたねえ」なんて単純でもひとつの文節らしきものにたどりつくのを身近なところで見たり聞いたりできるのは、ささやかながら人生の幸せのひとつだと思う。

以前、娘と過ごす日々を「神様にことばの建築現場を見せてもらっているようだ」と喩えたことがある。ていねいに足場を建て、ひとつひとつ木を組みあわせて、ゆっくりと出来あがっていく楽しい大伽藍の建築現場には、しばしば畏怖の念すらおぼえる。
わたしにとって子どもを孕むことは、ことばを孕むことだった。

本書のなかで思わず笑ったエピソード。
その一。
二歳になったお嬢さんがこんな歌を無心にうたっていた。

オマタのハナハナいやいやよ

メロディでなにをうたっているのか母親にはすぐにわかったとか。これ、みなさんもだいたい想像がつくかと思いますが、いちおう正解は一番下に書いておきます。

その二。
このお嬢さん、クリスマスの頃には、こんな替え歌をつくってあそんでいた。

もしもしカメよ カメさんは
いつもみんなのわらいもの

これは後半が赤鼻のトナカイになぜかなっちゃったもの。なんとなくわかるなあ。でも笑い者になっちゃうのはカメさんのほうじゃないんだけどねえ。

「お股の花々」の正しい歌詞は、誰でも知ってる
Old MacDonald had a farm, E I E I O.
でした。(笑)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009/08/01

7月に読んだ本

『眼の快楽』中村真一郎(NTT出版/1996)
『幻の声—髪結い伊三次捕物余話』宇江佐真理(文春文庫/2000)
『私の昭和史・戦後篇(下)』中村稔(青土社/2008)
『ブランディングズ城は荒れ模様』P G ウッドハウス/森村たまき訳(国書刊行会/2009)
『謎の旅人 曽良』村松友次(大修館書店/2002)
『見知らぬ場所』ジュンパ・ラヒリ/小川高義訳(新潮社/2008)
『東京暮らし』川本三郎(潮出版社/2008)
『紫紺のつばめ—髪結い伊三次捕物余話』宇江佐真理(文春文庫/2002)
『会話の日本語読本』鴨下信一(文春新書/2003)
『イロニアの大和』川村二郎(講談社/2003)
『増補 書を読んで羊を失う』鶴ヶ谷真一(平凡社 ライブラリー/2008)
『二十世紀思想渉猟』生松敬三(岩波現代文庫/2000)
『吉本隆明歳時記 新版』(思潮社/2005)
『さらば深川—髪結い伊三次捕物余話』宇江佐真理(文春文庫/2003)
『エラスムスの勝利と悲劇 (ツヴァイク伝記文学コレクション6)』(みすず書房/1998)
『さんだらぼっち—髪結い伊三次捕物余話』宇江佐真理(文春文庫/2005)
『黒く塗れ—髪結い伊三次捕物余話』宇江佐真理(文春文庫/2006)
『君を乗せる舟—髪結い伊三次捕物余話』宇江佐真理(文春文庫/2008)
『鬼平犯科帳 新装版〈1〉』池波正太郎(文春文庫/2003)〈再読〉

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2009年7月 | トップページ | 2009年9月 »