新刊本の売れない理由
本日の朝日新聞の一面によれば、昨年の新刊本の刊行点数は約7万6千点だったそうな。
ここ20年、2兆円以上あった売上も、96年の2兆6563億円をピークに年々落ち続け、ついに今年は2兆円を大きく割り込むことが確実であるといいますな。記事によれば、本が売れないから売上をあげるために刊行点数を増やしているが、返本率は4割以上だとか。
わたしの観察では、通勤電車などで図書館の本を読んでいる人が以前より増えたような印象がある。それも、ハードカバーにかぎらず、文庫本でも図書館の本であったりする。
本を読む人は、さほど減ってはいないと思うのだが、本を買う人は激減しているのではないかという気がしていたが、やっぱりなあという調査結果であります。
わたしの場合はどうか。
毎月読んだ本をこのブログの月初にアップしているので、今年読んだ本の記事をエクセルに落として分類してみた。
11月末までに読んだ本は全部で187冊。(文庫の上下などは2冊と計算)
内訳はごく大雑把に分けると、図書館の本が118冊、古本が45冊、新刊本が24冊という結果である。
ただし新刊本24冊のうち21冊は、買ったのはわたしでなくてカミさん。たまたま家にあったお下がりを読んだのでありますね。(笑)
だから、わたしが身銭を切った新刊本はたったの3冊。そのうち2冊は洋書でamazonの取り寄せだから、いわゆる本屋さんで買った国内の新刊はたったの1冊でした。
(堂目卓生の『アダム・スミス『道徳感情論』と『国富論』の世界』)
うーん、自分でもまさか新刊本を本屋さんでは1冊しか買っていなかったとは思ってもみなかったので、びっくりした。(笑)
わたしにとって本のない人生はおよそ考えられないものなので、もっとお金を出すことにやぶさかではないのだが、しかし、そもそも公共図書館が無料貸本屋になってるのをいいことに、テメーらただ読みばっかしやがってとか、ブックオフが諸悪の根源だなんていう作家や出版業界の一部にある声もなんだかなあと思ってしまう。
言うことをきかない子どもにてこずって、「じゃあ、○○ちゃんはママが死んだっていいのね」なんてヒステリー気味の脅しをかけるお母さんがときどきいますが、その伝でいけば「もうこんなんじゃやってられないわ。図書館やブックオフの本ばっかり読んで。どうせわたしたちの新刊なんか買わないんでしょ。いいわ、もう出版なんかやめてやる。あんたたちわたしたちがもう新刊、出さなくなってもいいのね」と著作者や出版業界が脅しをかけたらどうでしょう。
ああ、これはもう答えははっきりしてますね。
「うん、いいよ。キミんとこで出してるこれとかあれとかそれとか(ここは週間ベストセラーの具体的な書名を任意にいれてくださいね)なくなったほうがよっぽどいい。ゴミも減るし。まだ読んでないずっと面白い本はいくらでもあるから、キミんとこの新しいのは別にいらない」というだけでありますね。
それにいい本ならやっぱり手元に置きたいから買うとおもうんだけどなあ。
「これとかあれとかそれとか」ばっか出してるから駄目なんだよ、きっと。
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コメント
これは面白い文章でした。
投稿: Kawamoto | 2011/12/14 18:28
どうもありがとうございました。
北村薫のミステリの中で、出版社に就職した新米編集者が、出版社というのは、黒字を出した本の利益で赤字の本を出し続ける商売なんだよと、先輩に教えられる場面があります。まあ、たしかにそういう面もある。出版サイドばかり責めるのも大人げないと、自分で自分の文章読み返して少し反省。(笑)
投稿: かわうそ亭 | 2011/12/14 21:31