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2010/03/09

英訳サラダ記念日

「短歌」3月号に俵万智と三枝昂之の対談が掲載されている。昨秋の国際短歌交流大会での公開対談を起したもののようだ。「haiku」のほうが、外国での認知度は高いと思うけれど、短歌の方も日本歌人クラブに短歌国際化推進部なんてものを設置しているんですね。ふーん。この対談で、俵万智の歌集『サラダ記念日』が英訳されていることをはじめて知った。たとえば—

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

には少なくとも三つの英訳があるそうで、丸写しで恐縮ですが、上から順番にA.クラストン、J.カーペンター、A.スタムの翻訳。

(1)
"Hey, this is great!" you said,
and so,
henceforth July the sixth shall be Salad day.

(2)
"This taste great." you said and so,
the sixth of July our salad anniversary.

(3)
Because you told me,
"Yes, that tasted pretty good."
July the sixth
shall be from this day forward
Salad Anniversary.

当日の会場にいたアメリア・フィールディングにも意見をもとめて、彼女の訳も紹介されている。こういう訳だ。

(4)
This taste good you said, and so July sixth became the salad anniversary.

俵万智本人は、英語は散文ならば読めるけれど、詩として味わうのはできないから、どれがいちばんよいかはわからないというような意味のことを言っている。
わたしの見るところ、おそらく日本人は(4)がいちばんオリジナルに近いような感じを持つのではないかと思う。しかし、単純にどの訳がいちばんいいか、というのはなかなかむつかしい。というのは、日本語の短歌のリズムや息づかいを、別の言語である英語にいかにうまく移すかというのがポイントと日本人のわれわれは考えがちだが、反対に英語圏の翻訳者は短歌を正統的な英詩の表現にまとめあげて、違和感のない英詩として読者に読ませることを翻訳のポイントにする場合もあるだろうからだ。
英詩の場合は、弱強格だとか弱弱強格だとか、さらに二歩格、三歩格なんてリズムの種類で、たとえばああこれは弱強五歩格の詩だね、なんてやるのだと思うので(もちろんわたしはぜんぜんわからない)どうしてもオリジナルの短歌の息づかいとは、おのずと変化せざるを得ないのではないかと思うなあ。



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コメント

どーも、ご無沙汰致しております。

中孝介の「それぞれに」を車で繰り返し聞いていたためでしょうか、それとも三島の「潮騒」をウン十年ぶりに読み返したせいでしょうか、こちらを訪れたくなりました。

久方ぶりに貴記事を読みますと、
なんといいますか、癒されますな(- -d。
それもご亭主の、知性を包み込むお人柄の賜物かと。

たまたまですが、1990年代初頭、東京JRの中野駅、夜10時前(飲んだ帰りなのでたぶん)、中央線の上りホームで、俵万智を目撃(笑)しました。本人に「俵万智さんですか」とその場に居合わせた別人が聞いて確認していたので、本人なのだろうと思います。写真通りの外見でした。

私は、英語にも詩にも知識とセンスが欠けているので、おこがましいですが、(3)が雰囲気的にピッタリのような気がしましたです、はい。

投稿: renqing | 2010/03/14 23:46

やあ、どうもお久しぶりです。
そういえば、関西にも結社の代表や人気歌人はけっこうおられるのですが、街で偶然お見かけしたという経験は残念ながらないなあ、とあらためて思いました。落語家やお笑いの方面はときどきお見かけするのですがね。「ナマ俵万智」接近遭遇はけっこう稀少かも。(笑)

投稿: かわうそ | 2010/03/15 22:27

お久しぶりです。最近、ebookに入れこんでいて、ごふさたしていました。
俵さんの和歌は、最初に出版されたとき、とても新鮮に感じました。
時代の空気がとてもうまく盛り込まれている、と思いました。
しかしながら、あのバブリーでのんきな時代の日本を念頭に置き、その時代に暮らした若者の気分、そのあたりが何となく分かって、初めて、俵さんの和歌のノリが味わえるような気がします。
英訳は、どの訳も訳としてはいいと思いますが、肝心のニュアンスが訳からは伝わりません。どんなにいい訳でも、あの時代に日本の空気を吸っていないとうまく味わえないのでは、と思いました。

投稿: 水夫きよし | 2010/03/18 18:18

こんばんわ。
たしかに翻訳とは別に、時代の空気というのはあるかもしれないですね。たとえば

「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの

もサラダ記念日の名歌のひとつですが、カンチューハイとカタカナで書かれた気分は、それまではもちろんなかった(缶チューハイそのものがなかった)し、現代にもないある特定の時代の気分をみごとにあらわしているような気がしますね。

投稿: かわうそ亭 | 2010/03/18 21:52

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