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2011/03/01

自然が一番はウソなのか(2)

キューピーの野菜工場については、その栽培方法があまりにわれわれの農業のイメージとかけはなれているので、不自然なものを感じるのではないかと思う。
土を使わない。温度や湿度だけでなく、炭酸ガス濃度や植物の生長に欠かせない光もナトリウム灯やLEDによる人口照明で最適に制御される。肥料は作物の成長にあわせて水から補給。たしかに人間の手によってコントロールされすぎて、どこにも自然なものがないようでありますね。

しかしながら、出荷された野菜を商品として見た場合はどうだろうか。

徹底管理された屋内の水耕栽培だから病害虫の心配がほとんどない。だから農薬を使う必要がない。肥料成分は必要量のみ与えられているので、収穫後に過剰な硝酸塩などの残留物がない。清浄で安全性が高いという宣伝は説得力がないだろうか。
皮肉なことに、ここまで「不自然」につくられた野菜だから、かえって純粋に自然なものであるという印象を与えるということはないだろうか。

一般の消費者としては、値段が違わないなら、こうした工場生産された野菜と、在来農家がつくった野菜とどちらを選ぶかは、好みの問題だと思うが、虫喰いも残留農薬も過剰な硝酸塩などの問題もないのだから、こちらを選ぶ人が多いかもしれない。

ただ、農家にとってありがたいことに、この工場生産の野菜は、なにしろ野菜工場のプラントが数億円というような設備投資が必要なものだから、当然コストが高くなる。
少々高くても品質が工業製品のように保証された、安全で見た目もきれいな野菜を選びますか、それとも同じように見た目もきれいで安いけれど農薬も使用されているかも知れない、肥料の過剰投与もあるかもしれないような一般農家の野菜を選びますかというハナシになるわけであります。もちろん、どちらもダメで有機栽培とか自然農法とかを謳ってその筋の認定マークをつけた野菜がベストだと思う人もいるでしょう。

ところで、意欲的な専業農家というのは、農業経営を現代的なものにするために、消費者の選好を求めて、これまでどんどん人為的なものを慣行農法に加えていったと思うのです。露地栽培から施設栽培という個人経営にしてはかなり高額な投資を行い、肥料や農薬を(農業試験場などの)科学的な実証データに基づいて用いて、大きさやかたちも均質で安定的な出荷が適当な時期に行えるように努力してきた。いわば、できるだけ自然の不確定な要素を減らして、自然を予測、計算できる人為的なコントロールの下に置こうとしてきたのですね。

これは、考えてみればあたりまえのことで、もともと農業という営みは、自然の生物を、人間の都合のいいように改変して行くという技術であった。コメも小麦も肉牛も豚もタマゴも、野生の自然からすでにかけ離れたものになっています。

そうであれば、農業は、商業資本主義の狗にすぎない広告代理店などが好んで宣伝文句に使用するエコなんたら、とか、自然との共生がどうたらとか、気色の悪い地球に優しいなんたらかたら(けっ)だとか、そういう口当たりのいいものとは、もともと違うものだったといえるのではないでしょうか。
もし農業をそういう側面からみれば、キューピーの野菜工場は、これぞ農業の王道だと言ってもいいものなのでしょうか。

でも、やっぱりそれはなにか変だと心の中でささやくものがありますね。ありませんか?
それはいったいなんなんだろう。

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