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2011年7月

2011/07/26

ルッコラの一生

Rucola_2

イタリア料理でサラダなんかに出てくるルッコラだが、英語ではアルグラ(arugula)またはロケット(rocket)と言うそうですね。スペース・シャトルを打ち上げるあのロケットと同じスペル。
和名はキバナスズシロというらしいのだが、わたしはごくごく最近まで口にしたことがなかったな。食べるとほんのりとゴマの香りがしますけれども、畑でつくっていても、このゴマの香りが漂って、なかなか楽しい気分をさそってくれる作物であります。
イタリアではこのルッコラ、むかしから惚れ薬として親しまれていたそうですから、『ロミオとジュリエット』のロレンス修道僧の薬草園にもあったかもしれませんな。

多くの草木には多くの優れた効き目があり、
ひとつとして役に立たないものはなく、
しかも千差万別。
(第二幕第三場/松岡和子訳)

昨年の11月に種苗店で買って定植したルッコラの苗、冬から春にかけて外葉をちぎってはサラダ菜にしているうちに、今年の3月中旬に薹立ちしました。一年草の菜っ葉ですから自家採種してみることに。採ったタネを二週間程前に適当に蒔いておいたら、ちゃんと育っているようです。こんなに小さくても、間引き作業をすると、ちゃんとゴマの香りが畑に広がるから大したもんですね。

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2011/07/24

あの年のオールド・グローリー

The ceremony was laden with symbolism. Missouri was the home state of President Harry S. Truman, whose major decisions regarding Japan had been to use the atomic bombs on two Japanese cities and to hold firm to the policy of "unconditional surrender" of his deceased predecessor Franklin D. Roosevelt. One of the flags displayed on the Missouri was the same Old Glory that had been flying over the White House on December 7, 1941, when Pearl Harbor was attacked. Another, rushed by plane from Annapolis, was the standard with thirty-one stars used by Commodore Matthew Perry on his flagship Powhatten when his gunboat diplomacy forced Japan to end more than two centuries of feudal seclusion. The appearance of Perry's small, mixed fleet of sailing vessels and coal-fueled, smoke-belching "black ships" in 1853 had propelled Japan onto its ultimately disastrous course of global competition with the Western powers. Now, a shade under a century later, the Americans had returned with a gigantic navy, army, and air force that reflected technology and technocracy of an order Perry could not have envisioned in his wildest dreams --flaunting the commodore's old flag as a reprimand.

EMBRACING DEFEAT
John W. Dower

1945年9月2日、東京湾に停泊した戦艦ミズーリ甲板で日本の降伏の正式な調印式がおこなわれた。日本の全権大使は重光葵。爆弾テロで右足を失った隻脚の重光が正装で体を傾げながら前に進むのを、ブリッジや艦砲に鈴なりになった水兵たちが見守る場面である。ユーチューブでそのときの映像を見ることができるようなので貼り付けておく。

このときアメリカはふたつの星条旗をミズーリに持ち込んでいる。ひとつは真珠湾攻撃の日にホワイトハウスに掲げられていた国旗。もうひとつはペリーが浦賀にやってきたときの旗艦ポーハタン号の星条旗である。このときの星は31個のもの。アナポリスからこのためにわざわざ空輸させたのですな。
映像でちらっと写るのはこの100年前のオールド・グローリー。
アメリカ人流の歴史意識というやつなんでしょうが、日本人としてはやや複雑な気持ちを抱きますね。

さてここまでが、現代史のおさらいですが、これにからんでちょっと気になったことがあった。たいしたことではないのだが、5月に米軍がビン・ラーディンを殺して、ただちに空母カールビンソンからアラビア海に水葬したという発表がありましたね。
911をパールハーバーになぞらえる気分が「対テロ戦争」開戦当時はあったと思うのですが、今回の儀式に、911当日ホワイトハウスに掲揚されていた星条旗が持ち込まれたという話はなかったように思います。日本の降伏とはちょっと違うわなとは思いますが、たんに公表されていないということかも知れない。
安楽椅子探偵のわたしは、ちょっと怪しいと考えているのですが、さてどうでしょう。

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2011/07/19

TOEIC 790

近いうちに郷里に帰って就農の予定とはいえ、すぐに百姓で食って行けるとはさすがに思えないので、しばらくは職探しもしなきゃならんだろう。この年で、雇ってくれる会社もないとは思うが、もしかして地方でも英語がわかる非常勤の嘱託なんて仕事があるかもしれない。しかし、いくら自分で多少は腕に覚えがありますと言ったってそんなのなんの意味もないので、めんどくさいけど、先月はじめてTOEICを受けてきました。
いまの先生は、まあ○○さんならスコアが860越えても別に驚かないけどね、なんて言ってくれていたので、そのつもりでいたのですが、(ずうずうしいね)結果は790とさんざんでありました。TOEICの説明によれば860から上がAクラスということらしいのね。とほほ。

Screencapture

ええと、ちょっと前の日経ビジネスによれば、1998年の日本と韓国のTOEICスコアの平均はどちらも570くらいだったのだそうですが、その後、韓国はご承知のように大企業が英語を重視するようになったのを受けて、2009年では、日本が590とほとんど変化がないのに、韓国は平均が620、いまやその差はどんどん開いているのだそうですね。なにしろ、ヒュンダイやLG電子は、新入社員の一次のスクリーニングが800なんだとか。サムスンの課長昇進は920オーバーが絶対条件だそうですよ、若い皆さん。ははは、なんて気弱に笑われても困っちゃいますが。
もっともいまでは韓国は、いまぼくらがいうTOEIC——リスニングとリーディングのふたつでできたテストはもうそれほど重視しないようです。あの内容で900くらいとれるのは当たり前で、むしろ話すことと書くこともネイティヴ並みに出来ることが求められているのだそうで。いや、これからの方はたいへんだ。

実際に受けてみて思ったのは、このテスト、英語がある程度できなきゃ高得点はもちろん無理ですが、英語の理解力とか運用能力とかを見るというより、英語の思考回路をつかった瞬時の判断力、短期記憶力、時間管理能力(なにしろ時間がたりないわ)といった要素をコミュニケーション力として測ろうとしているのだと思います。今回はむしろ得意なリーディングで回答の時間配分を間違えたなあ。時間の要素がいちばんこのテストでは重要とあらためて痛感。精読したら負けという試験なんだよね、これ。わかっちゃいたのですが。
負け惜しみですが、案外、大学で英米文学を研究しているセンセー方が800とれないことだって十分ありそうであります。
それにしても、どうしようかなあ、もう一回受けてせめて800台のスコアが履歴書に書けるようにしたほうがいいかしらん。

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2011/07/15

トラスト・ミー

ネルソン・デミルの新作『The Lion』――タイトルからファンのみなさんにはあきらかでしょうが、『The Lion's Game』の続編――のなかに、こんな箇所がありました。
主人公のジョン・コーリーとかみさんケイトの会話。

She nodded, then asked me, "Have you told Tom about Boris?"
I knew I couldn't lie because she'd check with Walsh, so I replied,
"I have not."
"Why not?"
Good follow-up question. And I couldn't finesse this, and I didn't want to tell her truth, so I retreated into the last refuge of husbands and boyfriends and said, "Trust me."
"What is that supposed to mean?"
"Trust me."

ケイトはFBIの特別捜査官であると同時に弁護士の資格ももっていますから、なかなか追求がきびしいね。重要な手がかりになるはずのもとKGBのボリスのことを上司のトム・ウォルシュに話してないって?あなた、またなにか勝手に始めたのね、という展開。

まあ、あらすじはどうでもいいのだけれど、トラスト・ミーって台詞は、なるほどこういう使い方をするわけでありますねえ。やはり重要な外交の場面で、一国の宰相が他国の元首に言うような言葉ではありませんな。いや、もう古い話ですが。

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2011/07/07

The Pillars of the Earth

20110707

ケン・フォレットの『The Pillars of the Earth』は、小さい活字のぎっしりつまったペーパー・バックでおよそ1千ページある。もっとも中身は、ローラーコースター型のオハナシだから、あんまり長さは苦にならない、するすると読めて、じつに面白い。
えー、ここまでやるか、もう、いいかげんに勘弁してやれよ、と思わず口にでるほど、善良な人々が苛まれる展開が延々と続く。主人公たちの小さな勝利は長続きせず、無政府状態の社会を絶好の機会にして悪と非道が栄える成り行きに読者の不満とフラストレーションは高まり続ける。もちろん最後は、1千ページのカタルシスといわんばかりにすべてが予定調和のなかに収まるのは、最初からわかっているので、こんな通俗的な勧善懲悪物語、長々読み通すのはただただご苦労様なことだ、といういやがらせみたいな言い方もできないことはない。
ただ、そう言ってしまってはみもふたもないので、じゃあ、つまんないのか、というと、最初に言ったように面白くて夢中になってしまうので困ってしまう。
まあ、ときにはこういう、白黒はっきりしたわかりやすい小説もまた必要ということで。

ケン・フォレットといえば『針の目』という出色のスパイスリラーを翻訳で読んで感心したけれど、この『大聖堂』が二十年ばかり前に新潮文庫ででたときはあんまり興味がもてずにパスしていた。ちょっと長いしね、さすがに。
今回、読んでみようと思ったのは、NHKのBSで、この作品のテレビドラマを放映するという宣伝を見たのがきっかけである。監督はリドリー・スコットで、8時間の長尺。番組の紹介をしていたのが、先日、亡くなった児玉清だった。放映されたのは3月、最後のほうは震災で放映予定が延びたように聞いている。
ドラマのメイキング映像が予告に使われていたが、リドリー・スコット監督はブタペスト郊外に、12世紀のイングランドの村をそっくり建設したらしい。ケン・フォレット本人も登場し、自分のイマジネーションのなかのキングズブリッジが現実のものとして再現されていることに感動したというようなことをしゃべっていた。
なんか、やたら面白そうだったのね。
ただし経験から言って、こういう長大な小説の映像化は、さきに本を読んでおいたほうがまず例外なしに楽しめる。
とまあ、そういうことで、いまさらではありますが、通勤の友に選んだというしだい。

でもねえ、小説で満足したから、再放送が8月にあるようなんだが、テレビ放送ではたぶんもう見ないんじゃないかな。(笑)
DVDになったら、気が向いたときに見るかもしれないけど。



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