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2012年6月

2012/06/25

奇跡の農法なんてないんじゃね?(4)

ところで、自然農法の本には、虫が食うのは窒素肥料をやりすぎるからだなんて書かれていますね。まあ、一理ありますけれども、わたしだって硝酸態窒素の残留ということにはかなり危機感をもっているので、なんぼベテラン(つまりうちの年寄り)から「もっと○○(化成肥料とか硫安とか)をドカッとやらんにゃあ、大きくならんいーね、色がつかんいーね、実がならんいーね」と言われても、ヘイヘイと笑って、まったく取り合わないのであります。だって自分が食べるんだもの、市場に持って行くならともかく——って身も蓋もない言い方。(笑) 

ということで、たとえば前回見ていただいたブロッコリーなどは、施肥量はむしろ少ないのだ。それでも、青虫は食うのである。連中にもそりゃあ好みはあるのだろうが、窒素が効いていようが効いていなかろうが、目の前に主食の葉っぱがそれしかなければ生き残るために必死で食うのであります。あたりまえじゃん。農薬使わないなら手で取るしかないのよ。(笑)

だから、農薬を使わず肥料もやらず雑草もとらずで、ご近所に阿呆扱いされ、指弾され、収入もなく財産も食いつぶしてもう首を縊るしかない人の農園に、最後の最後の年に神の恩寵のごとく実りがもたらされる。それから先はもう、土づくりだけで、病気も害虫も寄り付かない、味も香りも信じられないほどよくて、数週間たっても汚く腐敗したりしない奇跡のなんたら!なんてのはまあそれはそれでうつくしい話だとは思うし、それがウソっぱちだとも思わないけれど、はたして再現性があるかどうか、普遍化できるものなのかどうか、このあたりはかなり留保しなきゃならない。それに、例の人については話がだんだんオカルトになるきらいもあるから(ある夜、空飛ぶ円盤に拉致されて、後日そのとき出会った外人に再会してたんだぜぇなんて言われても、「はあ」としか言えんよ、わたしゃ)そういうのは少なくともわたしむきではない。
原理主義的な自然農法は、そんなうまくいったら苦労はないよ、というくらいのスタンスであります。

けっきょく、我が田に水を引くようなつまらん意見だなあ、と思われるだろうが、わたしは田舎の小さな農家が自家消費用につくっている野菜がベストではないにしても、普段食べる野菜としてはかなりいい選択だと思う。(コメはいまちょっと置いておきます)
日本の農業ということについては、零細で兼業で高齢の農家を大規模化、集約化、企業化して国際競争力をつければ恐くない、なんていかにも論客っぽい人は主張するわけだけれども、わたしはそれにはあんまりこころひかれないのね。(このあたりのことはTPPについての話でも書いた通り。TPPについて語る時にやつらの語ること
ひじょうにざっくりした話だが、もしかしたら一般のご家庭が、専属専任の小規模農家を、たとえばかかりつけのホームドクターを選ぶようにお持ちになるのが、国の農業のあり方として成り立つのではないかという考えをいまわたしはもっています。このあたりは、もうすこし詰めないと安易に言挙げできないことではありますが。

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2012/06/24

奇跡の農法なんてないんじゃね?(3)

さて、自然農法の悪口めいたことを書いてきたけれども、じゃあ慣行農法のほうが優れているのかというと、それはそれでちょっと口が重くなる。
たとえば農文協の「現代農業」という雑誌がある。この出版社は自然農法にも力を入れている立場だということをまず頭にいれて以下をお読みいただきたい。
6月号の「農家が見る病害虫写真館」という特集で、いろんな野菜農家の日常の栽培管理がわかる。

たとえば高知県安芸市のナス農家・Nさんの場合——

それ(ススカビ病のこと・獺亭注)には早期防除。ふだんはダコニールとかで15日おきに定期予防散布してるけど、病気の葉を見たら7日おきにかける。葉の表に黄色い病斑が二、三見えたくらいで薬剤をやらんとダメやろね。

あるいは、宮崎県西都市のキュウリ農家・Tさんの場合——

でもオレ最近、菌核にすごく効くクスリの混用を見つけた。こんな尻が腐れかけたやつが出ても、それをかけたら治ったからね。ポリベリン+スミレックスよ。ポリベリンはポリオキシンとベフランが入った混合剤だけど、それとベフラン(原文通り。スミレックスの誤りか・獺亭注)の組み合わせがいいみたい。

貸し農園時代、仲間とおしゃべりしているときに、ひとりのメンバーが近所の農家のやってる農薬散布について、「だって○○んとこは、自分ちじゃ、あの茄子、ぜったい食わないんだっておれにはっきり言ったぜ。別のとこに小さな畑つくって、そっちで農薬かけない茄子をつくってるんだとよ。孫にこんなモン食わせられねえからなあ、なんだと」
「ははは、ちがいねえ」

消費者の皆さんは、こういうことはうすうすとは知っていると思う。そして、どうしてお百姓さんは、農薬なんてものを使うんだろう。無農薬でやってくれればいいのにと思っている。

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では、右の写真を見ていただこう。 自分の恥をさらすことになるが、これはこの6月22日に撮ったわたしの畑のブロッコリーで一番ひどい食害の葉っぱの無惨な姿だ。やったのはモンシロチョウの卵から孵った青虫である。
だめな百姓だなあ、と思われるだろうが、農薬をつかわないということは、こういうリスクをつねに抱えるということなんである。

では、ワタクシは百姓としてさぼっていたのか。

毎日ひらひら優雅にモンシロチョウは畑を舞う。畑の作業をするときに、わたしは子供用の捕虫網を携えている。べつにそれが目的ではないが、行きがけの駄賃とばかり、近くに、ふーんふーんと(別にそういう声がするわけではないが、こっちはこんな気がするのね)モンシロチョウがやってくると、捕虫網を一振り、運がよければ確保してただちに網越しに踏みつぶす。その数、たぶん一日で30頭はくだらないだろう。
早朝と夕方には時間があれば極力見回って青虫の捕殺をする。一株で、多いときは4、5匹はみつけてすぐにつぶす。指先が緑に染まる。30株あるから一日で100匹から多いときは200匹くらいは殺しているだろう。

べつにブロッコリーだけではないから(今年は山口県はカメムシも異常発生でピーマンや獅子唐のカメムシも捕殺しなきゃならない)これが毎日ではないが、5月、6月で20日くらいこういう日があると思うので、少なく見積もって、わたしはこのシーズン、モンシロチョウは600頭、青虫は2000匹くらいを捕殺していることになる。
それでも、雨が降ればハウス栽培ではないから、畑には入れない。雨があがるとすぐにモンシロチョウは、ふんふーんと優雅に舞って、ブロッコリーやキャベツに卵を産みつけ、幼虫の捕殺が2日も遅れれば、野菜は写真のようにされてしまうこともあるのですね。
(以下次号)

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2012/06/23

奇跡の農法なんてないんじゃね?(2)

貸し農園で自然農法に取り組んでいた方がいたという話を前回したわけだが、もちろん貸し農園のことだから、たかだか一畝(10×10メートル)では小さすぎてほんとうは意味があまりなかったのだろうと思う。ほかのメンバーが使う肥料や農薬だって、多少はその方の区劃に影響するはずだから。だからまあよけいにその先生は我々に敵意を抱いていたのかもしれないけれども。

じつは、そのときにそこの様子を写真に収めていたのだが、こういうのは一種の肖像権みたいなものがあるのかしら。でも写真で見てもらったほうが話が早いので、ここに掲げておきます。

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どうでしょう。クリックすると拡大するからじっくりご覧ください。
ほかの畑は、もちろん家庭菜園のことだから、ばらつきはあるけれど、基本的にはきちんと畝が立って、雑草もそれなりに管理された、「やさいの時間」に登場するような畑なのですね。そのなかに一区劃だけこういう状態の畑があるわけです。(笑)
いま、こうして眺めてみると、正直なところ、ここの野菜、けっこういいような気がします。たぶん、野性味のあるおいしい野菜だったんじゃないかなあ、と想像します。
では、たとえばわたしが自分で好きなようにできるある程度の広さの畑を、こういうふうにしてみたいと思うかというと、すくなくともわたしは遠慮しますね。

理由は二つあります。

まずひとつは、収量の問題です。食材として潤沢に供給できるほどの収穫が見込めるとは思えない。ある種の宝石のように、慣行農法なら平均的に100キロ穫れる野菜が、数キロしか穫れない、なんてのはわたしがめざすものとは違う。
第二に、これとも関連しますが、食物の単独の味ということに、あんまりブンガク的な思い入れは持ちたくないということがあります。
この広大な畑でわずか数本しか穫れない奇跡の大根、その味の驚異的な美味しさ!——とかなんとか、テレビ局やらタレントさんなら、ここぞとばかり声を張り上げて、商売にいそしむのだろうけど、われわれ百姓は、大根は、はあ、大根だべ、というのが散文的で、ワタクシ的には、こちらでいきたいのであります。
(以下続く)

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2012/06/22

奇跡の農法なんてないんじゃね?(1)

故郷に帰って農作業を始めるまえ、関西でサラリーマンをしながら、二年間、小さな畑を借りて野菜作りの練習をしていた。公営の市民農園の場合は順番待ちがあるので、2年か3年くらいで返さなきゃいけないところが多いようだが、そこは個人がやっておられた貸し農園だったから、10ばかりの区劃(1反を10等分したようなレイアウト)だったけれど、果樹(イチジクとかサクランボとか)を植える人もいたくらいで、ほとんど自分の畑のように土壌の改良をしたり、籾殻の「くん炭」焼く人がいたり、みんな好きずきのやりかたで野菜作りを楽しんでいたのですね。(ただしこの籾殻燃やすのは消防署の関係だろうけどその後御法度になった)

そのなかのお一人が、どうやら自然農法の熱烈な信奉者だという噂だった。

畑でお見かけしたときはこちらから「こんにちわ」の声掛けくらいは当然するけれど、お話をしたことはなかったので、あくまでその方が自然農法の信奉者だというのは、農園のオーナー(正確にはその息子さんで農大出ながら企業に就職して、気の毒に、私と知り合ったときは東京に転勤させられて、連休などのときに農作業に帰って来るのだが)とおしゃべりしているときに、ちょっと、やれやれという感じで聞いたのだった。

なんで、やれやれ、という感じかというと、その方にはどうやら指導者なる先生らしき人がいて、その人に言われることを金科玉条のごとく守っているからなのだが、農大を出ているくらいの彼からすると、その「ご指導」がちゃんちゃらおかしいかららしい。

実は、わたしもその指導者の先生らしき人を一回見たのだが、こちらから「今日は暑いですねえ」なんて(わたしは自分で言うのもなんだがけっこうフレンドリーなんである)挨拶しても、ふんと顔を背けて返事もしない、やたら傲慢な、感じ悪い人だった。たぶん、せっせと除草したり、追肥の化成肥料をやったり、平気でしゅっしゅと除虫スプレー使ったりする、「けしからん」方法を目の前で見せられて、いらいらしておられたのであろうと想像したのであります。「このバカが」というお顔であった。(笑)

なにしろその先生の「ご指導」による畑の様子をみると、いわゆる不耕起自然農法というやつであることは明白で、それと示されなければ、そこが一応、畑であるとはわからないくらい草ぼうぼう、畝のかたちもほとんど原型をとどめず、しかし草の中をよくみるとひねこびた大根やネギらしき野菜がちょろちょろと生えているのであった。
(以下続く)

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2012/06/18

5月の畑仕事

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しばらくブログの更新をしていなかった。
早朝から夕方までお天気がよければ体を酷使しているので、夜はくたびれてさっさと寝てしまうのであります。まあ、よそ目には健康的に見えると思うが、じつのところ年が年だから、腰やら、指の関節やら、あちこち、急速にガタがきている感もある。(笑)
いちおう日々の仕事の様子や雑感などは Facebook にちゃちゃっとアップしているので、ときどきフォローしてくださる方もあるのだが、近況報告をここでもしておかねばと考えた次第。

いま畑で育ててる野菜はだいたい以下の通りです。(順不同)
大玉トマト(三種)、ミニトマト、ナス(三種)、ピーマン、キュウリ、大根、スイートコーン、ニンジン、ブロッコリ、キャベツ、レタス、チシャ、ジャガイモ(二種)、サツマイモ(三種)、サトイモ、ハスイモ、エダマメ、オクラ、トウガラシ、チマサンチュ、ルッコラ、ネギ(三種)、ゴーヤ、シシトウ、ゴボウ、スイカ、ワケギ、大葉、ラディシュ

すでに収穫を終えたもの。イチゴ、コールラビ、蚕豆、スナップエンドウ、グリーンピース、ジャガイモ(男爵)ほか。
それぞれの圃場の土壌や水はけ、草、虫などの発生状況、風向き、日当りなどを体で覚えているのが実情。
山にも週に何回か通っているのだが、さすがに夏になると、薮の勢いは猛烈で、刈り払い機や鉈、鎌などで「切り開いた「陣地」の維持もままならない。
蛇が出てもあんまりびびったりしなくなったんだぜぃ。ワイルドだろぅ、てなもんであります。(笑)

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