奇跡の農法なんてないんじゃね?(1)
故郷に帰って農作業を始めるまえ、関西でサラリーマンをしながら、二年間、小さな畑を借りて野菜作りの練習をしていた。公営の市民農園の場合は順番待ちがあるので、2年か3年くらいで返さなきゃいけないところが多いようだが、そこは個人がやっておられた貸し農園だったから、10ばかりの区劃(1反を10等分したようなレイアウト)だったけれど、果樹(イチジクとかサクランボとか)を植える人もいたくらいで、ほとんど自分の畑のように土壌の改良をしたり、籾殻の「くん炭」焼く人がいたり、みんな好きずきのやりかたで野菜作りを楽しんでいたのですね。(ただしこの籾殻燃やすのは消防署の関係だろうけどその後御法度になった)
そのなかのお一人が、どうやら自然農法の熱烈な信奉者だという噂だった。
畑でお見かけしたときはこちらから「こんにちわ」の声掛けくらいは当然するけれど、お話をしたことはなかったので、あくまでその方が自然農法の信奉者だというのは、農園のオーナー(正確にはその息子さんで農大出ながら企業に就職して、気の毒に、私と知り合ったときは東京に転勤させられて、連休などのときに農作業に帰って来るのだが)とおしゃべりしているときに、ちょっと、やれやれという感じで聞いたのだった。
なんで、やれやれ、という感じかというと、その方にはどうやら指導者なる先生らしき人がいて、その人に言われることを金科玉条のごとく守っているからなのだが、農大を出ているくらいの彼からすると、その「ご指導」がちゃんちゃらおかしいかららしい。
実は、わたしもその指導者の先生らしき人を一回見たのだが、こちらから「今日は暑いですねえ」なんて(わたしは自分で言うのもなんだがけっこうフレンドリーなんである)挨拶しても、ふんと顔を背けて返事もしない、やたら傲慢な、感じ悪い人だった。たぶん、せっせと除草したり、追肥の化成肥料をやったり、平気でしゅっしゅと除虫スプレー使ったりする、「けしからん」方法を目の前で見せられて、いらいらしておられたのであろうと想像したのであります。「このバカが」というお顔であった。(笑)
なにしろその先生の「ご指導」による畑の様子をみると、いわゆる不耕起自然農法というやつであることは明白で、それと示されなければ、そこが一応、畑であるとはわからないくらい草ぼうぼう、畝のかたちもほとんど原型をとどめず、しかし草の中をよくみるとひねこびた大根やネギらしき野菜がちょろちょろと生えているのであった。
(以下続く)
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