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2013/06/25

もの喰う虚子

岩波文庫の『虚子五句集』の上巻から、虚子の食べ物の句を抜き出してみる。
ことさら多いということではない。ふつうに俳句を詠んでいれば、おそらく誰でもこれくらいの割合かしら、というくらいの頻度で出てくるだけ。また、どれも(たぶん)とくに名句というわけでもない。とくに深い意味はないのだけれど、せっかく抜き書きをノートに取ったので、披露します。まだ下巻が残っているが、気が向けば続けるかもしれない。
上巻は、いずれも自選の『五百句』と『五百五十句』、『六百句』の三つの句集を収録。明治27年から昭和20年までの句を、基本的に年代順に並べてある。

折の蓋取れば圧されて柏餅
蕗の薹の舌を逃げゆくにがさかな
柴漬の悲しき小魚ばかりかな
雑炊や後生大事といふことを
焼芋がこぼれて田舎源氏かな
水飯に味噌を落して濁しけり
葛水にかきもち添へて出されけり
枝豆を喰へば雨月の情あり
奈良茶飯出来るに間あり藤の花
七草に更に嫁菜を加へけり
重の内暖にして柏餅
鯖の旬即ちこれを食ひにけり
落花生食ひつつ読むや罪と罰
草餅をつまみ江山遥かなり
麦飯もよし稗飯も辞退せず
おでんやを立ち出でしより低唱す
ハンケチに雫をうけて枇杷すする
失せてゆく目刺のにがみ酒ふくむ
又例の寄せ鍋にてもいたすべし
いかなごにまづ箸おろし母恋し
見事なる生椎茸に岩魚添へ

さすがに敗戦の前後は食べ物の句はあまり出ない。「おでんや」や「目刺」の句に酒がからむけれども、どちらかといえば、ごくごく普段の夕餉やおやつや野外の飲食の光景が思い浮かぶ。うまいとか下手であるとかをノンシャランに無視できる、虚子ならではの俳句。


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