歳時記にはいろいろ面白い季語がある。今の時期だと「亀鳴く」とか「雁風呂」などをつかった俳句を詠んでみたくなる。ただし実際には亀は鳴かないそうだし、雁の供養もつくりばなしだというわけで、どちらも、見て来たようなウソを吐きみたいなものであります。
やはり春の動物をモチーフにした季語に「蛇穴を出づ」がある。こちらはたしかに、この時期の自然の事象にはちがいないので、見て来たようなウソと言っては失礼になる。だが、多くの俳句作者にとっては、見慣れた光景というほどでもないので、これまた「亀鳴く」とか「雁風呂」のような気分の俳句に近いような気がしますね。
けつかうな御世とや蛇も穴を出る 一茶
蛇穴を出て見れば周の天下なり 虚子
ところで、百姓をしていると、この長いやつとは、あんまりお近づきになりたくなくとも、頻繁に遭遇する。今日も、土手の草を刈りながら、小さな穴を見つけるたびに、うーん、こいつはもしかしてアレじゃないかしらん、などと考えていたら、いましたね。まだほんの子供でしょうか、太い雑草の茎とか、でかい蚯蚓とかと間違えそうなちっこいのが。こういうのはまだ可愛い。いや、可愛いったって、仔猫なら思わず頭を撫でてやりますが、小さくても蛇は蛇ですからね、鎌の先ですこしじゃれてやるくらいですけれど。
蛇穴を出てこなければこなければ 獺亭
コメント
疑懼ひとつもたげくるかな蛇の舌 良秀
恥ずかしながら、俳句1、8年生がつくりました。句の先輩の感想をいただけたら嬉しく存じます。
投稿: 小川良秀 | 2017/06/18 09:26
小川さま
初めまして(ですよね?)コメントありがとうございました。
俳句は全く、下手の横好きに過ぎませんので、人様の句に何か申し上げることはできませんが、なにやら、昨今の世相を連想いたしました。
投稿: かわうそ亭 | 2017/06/18 13:20
ぎく、のわが蛇の句の一言いただきまして遅くなりましたが御礼申し上げます。たしかな視点でした。よく参考になりました。
この前の即吟で多を用いてのつぎのような句ができました、なにかあればお聞かせください。
多情にてこの世は眩(くら)し矢車草 良秀
投稿: 小川良秀 | 2017/07/02 10:18