村上春樹の『女のいない男たち』を読む。
〝男と女の間には〟ではじまる「黒の舟歌」を連想したのはわたしだけか。なんだか老大家の円熟した芸を見せられてるみたいだなあ、などと思ったが、よく考えれば、この作家が昔風の文壇にいれば、まさにそういう大御所の巨匠になっているはずである。
いや、わたしが知らないだけで、じっさいにそう呼ばれているのかもしれないけれど。もしかしたら。
「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」「女のいない男たち」の6篇で、ふたつの作品に共通する場所(ジャズのLPレコードをかけているバー)がでてくるが、連作というほどのつながりはない。もっとも、「まえがき」を読むと、これらがあるやっかいな情念を共通のモチーフにしていることがわかる。
読了した後で、もう一度、この「まえがき」を読むと、なにがどうというのはむつかしいのだが、なんとなく言わんとするところは、わかるような気もしないではない。
まあ、例によってするする読めるけれど、ちょっと(精神の)胃にもたれる感じもあって、個人的にはあんまり好きになれないな。
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