この間に読んだ図書館の本。
『一陽来復 中国古典に四季を味わう』井波律子(岩波書店/2013)
もともとは読売新聞に連載された随筆「四季おりおり」と日経新聞の連載「今のこと、昔のこと」を収録。軽い読み物ながら、味わい深い。政治家のうすっぺらな言葉、言葉、言葉に辟易している昨今の清涼剤か。
『反歴史論』宇野邦一(講談社学術文庫/2015)
小林秀雄、柳田国男、レヴィ・ストロース、ニーチェ、フーコー、レヴィナス等々と、絢爛と並ぶ知の巨人たちに目を奪われて手に取った低級なミーハー読者には、いささかレベルが高すぎて、なんのことやらチンプンカンプンというお粗末。まあ、ときどき、こういうムツカシイ本も読まなきゃ、バカが亢進するだろう。反歴史なんてものはない。自分の嫌いな連中が操る歴史は厭わしいというだけのことではないのかね、という素朴な感想。
『莫言神髄』吉田富夫(中央公論社/2013)
ノーベル文学賞受賞講演をふくむ四つの講演録と、莫言作品の翻訳を通じて作家と親交の深い著者による莫言文学と風土の点描。2010年北九州市で行われた講演の一節にこういう箇所がある。中国人富裕層とやらをもてはやし、これからはかれらに農産物の輸出じゃあ、とか叫んでいる日本人も多いことですが。
「貧困は誰しも忌み嫌うが、正当な手段を用いずして貧困を脱却するなど、すべきではない、と。今日、二千年前の聖人の教えは、もはや民百姓の常識になっています。ところが、現実生活にあっては、正当ならざるやり方で貧を脱して富に至ったものがゴロゴロしていますし、正当ならざるやり方で貧を脱して富に至りながら懲罰を受けていない者がゴロゴロいますし、正当ならざるやり方で貧を脱して富に至る人たちのことを痛罵しながらも、おのれにチャンスさえあれば同じことをする者にいたってはもっとゴロゴロしています。」
まあ中国にふたたび動乱が起こる日も遠くはないでありましょう。富裕層に農産物を輸出?はは、グッドラック。
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