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2015/10/03

デイヴィッド・ロッジとジュンパ・ラヒリ、その他

『必笑小咄のテクニック』米原万里(集英社新書/2006)
方法論で分類したジョーク集という触れ込みなんだが、まあ、それほど大したものではない。思えば、一昔前のジョークはおもわずニヤリとさせられるものが多かった。このごろはなんだか現実がジョークみたいな気がするなあ。憲法解釈を反転させる閣議決定について内閣法制局には公文書がないそうな。やれやれ。

『絶倫の人 小説H・G・ウェルズ』デイヴィッド・ロッジ/高儀進訳(白水社/2013)

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ひどい題名だなと思いながら読み始めて、なんだ、そのまんまじゃんと感心したり、呆れ返ったり。H・G・ウェルズという人は、二度結婚したが、家庭の外に何人も愛人をもっていた。短期間の情事は些事だから別のこととして、本気で好きになって長くなりそうな愛人は妻にもきちんと報告していた。つぎつぎに新しい女が愛人として本書に登場するので、名前を覚えるのも面倒くさい。しかし登場人物はすべて実在した人間で、手紙や刊行物、書籍、談話なども大半が出典があるそうな。小説ならリアリティないじゃんと思うところだが、まさに事実は小説よりも奇なりであるな。ちなみに原題は"A Man of Parts"。
Partsには二つの意味があって、ひとつは才能という意味。もう一つは、陰部(private parts)の短縮形。同じ伝記小説という手法では『作者を出せ!』のヘンリー・ジェイムスのほうが心穏やかに読めるなあ。

『小田嶋隆のコラム道』小田嶋隆(ミシマ社/2012)
「が、読者は、実際には、彼らが考えているほど、細かく読んでいない」というのが推敲についてのアドヴァイスで、「つまり、書いてしまえば良いのである」が書き出しについてのアドヴァイス。まあ、実戦的な文章術だわな。

『低地』ジュンパ・ラヒリ/小川高義訳(新潮社/2014)
これはよかった。たぶん、今年読んだ中でもベストの一冊。
1950年代にカルカッタで双子のように育った年子の兄弟。活動的な弟と内省的な兄。それぞれ違う理系の大学に進学して、兄はアメリカで博士課程に、弟は学問よりも政治運動にのめり込む。やがて兄の元に弟が殺されたという電報が届く。毛沢東思想に強く影響を受けた極左組織の党員となった弟は、当局に追われ、自宅に潜伏していたところを発見されて、両親と若い妻の目前で射殺される。兄が帰国すると弟の妻は身ごもっていた。兄は、彼女を妻とし、生まれてくる子供を自分の子供としてロードアイランドで生活をはじめるが——
予想したようなお涙頂戴的なオハナシには全然ならないところがすごい。とくにこのはじめは無力な脇役のように思えた妻が後半はむしろ主人公のようになる展開に舌を巻く。
ジュンパ・ラヒリはこれまでの作品も素晴らしかったが、本書はとくに傑作ではあるまいか。


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コメント

ラヒリの作品は、Interpreter of Maladies, The namesake の読後感がとてもよかったので、この「低地」もサンプルはダウンロードしておいたのですが、そのままになっていました。かわうそさんの評価を信じて購入する事。今は、The Goldfinch, Donna Tartt著、を読んでいます。けっこう丁寧に読んでいるので、いつ読み終わるやら、、。

投稿: シミズクニハル | 2015/10/05 20:12

こんばんわ。昨年のピューリッツァー賞ですね。アマゾンをみるとPBでは880ページになってる。長い!(笑)わたしのいまの宿題であるヒラリー・マンテルのWolf Hall (こっちはマンズ・ブッカー)もけっこう分厚いPBですが、それでも650ページですからねぇ。しかし、どんなに分厚くなっても1冊でどーんと出版する習慣は好きだなあ。

投稿: かわうそ亭 | 2015/10/06 20:32

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