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2015/11/09

『密造人の娘』ほか

『密造人の娘』マーガレット・マロン/高瀬素子訳(早川書房/2015)
これは面白かった。ミステリとして、フーダニットの要素もきちんと押さえた上で、登場人物やアメリカ南部の空気をじっくり描いて、重くなりすぎず、軽薄にもならずのバランスがなかなかよろしい。1992年のアメリカ探偵作家クラブ賞、アンソニー賞、アガサ賞、マカヴィティ賞の4賞を取った作品だそうで、翻訳も1995年には同じ訳者で出ていた(ミステリアス・プレス文庫)のを新版にして再び上梓したもの。埋もれさせるには惜しいということだろうか。ただし、手に取ったのは、たまたまカバーのイラストが気に入ったからでありました。なんだかコミックっぽい絵柄がいいじゃないですか。

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『九死一生』小手鞠るい(小学館/2013)
はじめて読む作家。文章もうまいし、ストーリーも巧みだが、いまひとつひきこまれるパワーがない。奥付の著者紹介を見ると、ほぼ同世代。恋愛観にしても、死生観にしても、親近感を覚えるけれども、逆にそれが、だからどうしたの、という物足りなさにも通じるのかもしれんな。

『ウエストウイング』津村記久子(朝日新聞出版/2012)
これまたはじめての作家。「最寄り駅であるターミナル近くの、廃線になった貨物レーン地下の長いトンネルを抜けると唐突に現れる」四階建て地下一階の椿ビルディングの西棟に寄り集まる人々のゆるいオムニバス風のオハナシ。ターミナルというのは、具体的に書かれてはいないが、ほかの記述から大阪駅だろうと思われる。だとすると長い地下通路で大阪駅と結ばれたオフィス地域といえば、かつての仕事場のあたりのことか、と思って読むと懐かしくて面白い。


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